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夢心地だった顔が冷ややかな表情へと変わった瞬間、璃音は胃の底がギュウッと締め付けられたような気持ちになった。
「…は?
お前、何言っちゃってるワケ?」
笑っているのに笑ってない。
何より、瞳が冷たい光をはらんでいる。
「瑠維は、どうして二人に薬を盛ったの?
なんで? 僕たちの両親なのに…」
コワイ…。
必死で言葉を紡ぐけれど、鼓動があまりに五月蝿くて、自分がちゃんと言えてるのかさえ解らない。
「璃音。
なんでそんな根拠の無い話ししてんだ?
兄ちゃん、そんな素直じゃない璃音はイヤだな」
剣呑な光が凄みを増し、璃音はますます竦み上がる。
「だって…っ」
「だって? なに?」
「だって瑠維…。
事故の後、僕は検査結果を見たんだよ?
お父さんとお母さんの体から、瑠維に処方されてた睡眠薬が検出されたのを。
市販されてない、効果の強い薬だったんだよ…?
二人の事故の後、数が合わなかったのも……僕は…っ、僕は知ってるもの…っ!!」
少しずつ、狂気が鎌首をもたげ出す。 瑠維の表情がさらに冷たくなった。
「………ふぅん…?
璃音に、とうにバレちゃってたか。
いけないなぁ…。
そういう大事な事は、ちゃんと兄ちゃんに早く言わなきゃダメだろぉ…?」
ギシ。
ギシ。
ベッドが軋み、瑠維が璃音の顔の方へとずり上がってくる。
「なぁ…?
もう、素直な璃音はいないのか?
兄ちゃんだけを信じてくれる、素直で純真な璃音は一体何処に行ったんだろうなぁッ!!」
ばしいっ!!
璃音の腹の上に跨がり、瑠維は両手を枕の両脇に叩きつけた。
「なあっ!?
全部お前のためだろッ!?
俺とお前が永遠の伴侶になるためには、あの二人が邪魔だったんだッ!!
何やかや理由をつけて、お前と引き離そうとするから悪いんだろ!?」
「それだけの…」
「は?」
「それだけのために、二人に薬を盛ったの?
あの時母さんは、お腹に赤ちゃんがいたのに………っ!!
双子の赤ちゃんが…僕と瑠維の妹達がいたんだよ!?
どうして?
何の罪もない翡翠と雲母(きらら)を、二人と一緒に殺さなきゃいけない理由は、何一つなかったじゃないか…!!」
「理由…?
大有りだろ…。
璃音の愛情を掠め取って行く奴らは、例え妹だろうと赦せないからだよ」
瑠維は、ニヤリと笑っていた…。
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