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◇◆◇◆◇ 「ん……、随分傷んでるな…」  璃音の傷を診た白川医師は流石に渋面をしたままだ。  龍嗣の膝の上で借りてきた猫の様に固まる璃音は、未だにビクビクと怯えている。 「中の方も傷んでいるから、治るまで少し痛むかも知れない。  一応、軟膏と座薬、化膿止めの飲み薬とか、いろいろ出しとくとして…。  今度は口だな。  どれ…開けてごらん?」  怖ず怖ずと口を開ける璃音。 「………歯はグラついてないようだな。  犬歯が当たって中が切れたな…。  ん、深くは無いし…口の中は治りが早いから大丈夫かな…。  頬は…、これもまた随分強く叩かれたなぁ…。  手形がバッチリ付いてるし、腫れてる。  暫く痣が残っちゃいそうだなぁ…」  腫れた頬に、そうっと湿布を貼る。  かなり気を使った筈だが、しみたらしく、璃音はブルリと震えた。 「かい摘まんだ話しは弓削さんの弟くんから聞いたが…………。  随分無茶苦茶な状態だったらしいな…。  男性同士の場合、強姦罪が適用されないが…。  どうする? 相手を傷害で告訴するかい…?」  静かに話す白川に、龍嗣も璃音も返答出来ないでいる。 「………今は、そういうことを考える余裕も無い…か。  ま、刑事、民事のいずれかで告訴しないまでも、璃音くんから相手を遠ざけておくに限る。  それと、後々、PTSD(心的外傷後ストレス障害)からパニック発作を起こす可能性もあるだろうから、早めにカウンセリングを受けるように手配しておこう。  まずは、体をゆっくり休めること。  それと、なるべく一人にしないこと…だな」  小さく縮こまる璃音に目をやり、深いため息をつく。 「うなされたり、怖い気持ちになったら、ちゃんと氷室さんにくっつきなさい。  いつも甘えてベタベタするだろうけど、それ以上にベタベタして甘やかして貰うんだよ…?」  白川医師は、そうっと頭を撫でようとしたのだが、あまりの怯えっぷりに手を引く。 『完全に萎縮してるな…。  野良猫より酷い怯えっぷりだ…』  怯えた事に申し訳なさげにしている璃音に対して、穏やかに笑ってみせる。 「気にしなくていいよ。  具合が悪くなったり、パニックになった時は、いつでも連絡を寄越しなさい。  勿論、夜中だろうが、明け方だろうが関係なく…。  わかったね…?」  コクリと頷くものの、ガタガタ震えている璃音を見て、白川医師も龍嗣も改めて瑠維の行為に怒りを覚えていた。

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