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◇◆◇◆◇  弓削によって連れ去られた瑠維が、小鳥遊に嬲られようとしている頃…。  龍嗣の腕の中で身を硬くしていた璃音が、少しずつ眠りに落ちようとしていた。 「…う、うく………っ」  必死で睡魔に抗っているのを、ゆっくり宥めて眠りに誘う。 「大丈夫、こわくない…。  もう、璃音は怖い目に遭わない。  私の腕の中にずっといるから大丈夫…」  龍嗣は、幼な子を寝かしつけるように、そうっと璃音の背中を撫でていく。 「………っふ…」  ふるふるしていた瞼が降りて呼吸が深くなっていくのを、龍嗣はじっと待つ。  膝や腕に触れる璃音の体は、ほんの少し温かみを増してきた。 「今は、ゆっくり眠るんだ。  ………いいね?」 「………」 「ずっと一緒にいる…。  璃音が安心できるまで、ずっといるから…」 「………ん……」  いつものように、龍嗣の腕の中で眠りに落ちた華奢な体は、まだ微かに湿布の匂いがする。  痛ましい出来事を頭の隅に追いやり、そっと上着をかけた。 「………落ちたかい?」 「…ええ」  白川医師がゆっくり立ち上がり、鞄のポケットから薬の袋を取り出す。 「………?」 「万が一、パニック発作を起こした場合の為に薬を渡しておこう。  一回につき、一錠。  あと、過呼吸の時の対処方も大丈夫だね?」 「ええ…。  ただ、明らかにおかしいと思われる時は、必ず連絡します」 「………ああ。  暴れた時には、千尋を連れて来るから安心してくれ」 「すみません、お手数を…」 「手数なんて思わないよ。  事が事だから、私も放っておけないのだし」  ひたすら恐縮する龍嗣を制し、白川は部屋から出ていく。  さりげなく亮がついていき、控えのドライバーとともにガレージへと向かったようだ。  ソファから立ち上がり、いつも一緒に寝ているベッドに璃音を運ぶ。 「…ん……」 「大丈夫……、いつも通り、一緒に眠ろうな…?」  額に口づけを落とし、毛布をかけてやると、ようやく安心したように意識を手放す。  睫毛に乗っていた涙を吸い取り、腕の中に抱き込んだ体は、より一層愛おしかった。

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