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◇◆◇◆◇
漆黒の闇の中、璃音は宛てもなく歩いている。
何かを探していたのか、それとも、何かから逃げているのかも分からない。
「龍嗣…、どこ…?」
あちこち見回して見るが、龍嗣の姿は見えない。
「璃音?」
「龍嗣…?」
声が聞こえた方向へ顔を向けるが、やはり龍嗣はいない。
「龍嗣、どこ?
隠れてないででてきてよ…」
「璃音。 おいで」
腕を広げる気配がして、璃音は必死で駆け寄り、抱きついた。
「龍嗣、どこにいってたの?
見えないから、捜したんだよ?」
「そうか…、すまん。
さあ、弓削も待ってるから行こうか」
「ん…」
差し出された手に掴まり、真っ暗な中を二人で歩く。
『なんだろう…。
僕、何か大事な事を忘れてる…』
肝心な何かが思い出せなくて、璃音は龍嗣を見上げた。
「…どうした?
何だか、不思議そうな顔をして…」
クスクス笑う龍嗣は、不安そうにしている璃音を抱きしめて、額に口づけてくれる。
確かに声は龍嗣のもの。
なのに、繋いだ手の感触が違う…。
漠然とした思いのまま上を向くと、少しずつ龍嗣の顔が変わってきていた。
「―――――ッ!!」
龍嗣じゃない。
龍嗣じゃないッ!!
それは、愛しい男ではなく、璃音から両親や妹たちを奪った者の顔。
よこしまな想いを抱き、璃音から仲の良い兄を奪った者…。
「る…い………」
「璃音、どうした?」
この上もなく優しい顔をして、璃音を抱きしめている瑠維。
「なあ…、璃音は、兄ちゃんの一番大事な伴侶だぞ?
ずうっと、一緒だ」
「………ちがうよ、僕の伴侶は龍嗣だもん」
「馬鹿だなぁ…。
璃音は、兄ちゃんがたっぷり蜜を注いでやったじゃないか。
見てみろよ。
兄ちゃんの蜜で、そんなに愛を孕んじゃってるくせに」
下腹を撫でられると、甘い疼きが広がった。
「ちがう…、違うッ!!
僕が欲しいのは瑠維じゃな…」
「…兄ちゃんだけだろ…?」
着ていた服を剥がされ、深い闇の褥に押し倒される。
抵抗できないまま、璃音は最奥まで楔を打ち込まれた。
「いや――ぁ―――――ッ!!」
悲痛な叫びを上げ、璃音は瑠維に何度も何度も貫かれる。
「助けてっ、龍嗣っ、龍嗣ぃ―――!!」
ぬたりと深い闇の中、璃音の叫びは塗り込められていった。
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