340 / 454

◇◆◇◆◇  漆黒の闇の中、璃音は宛てもなく歩いている。  何かを探していたのか、それとも、何かから逃げているのかも分からない。 「龍嗣…、どこ…?」  あちこち見回して見るが、龍嗣の姿は見えない。 「璃音?」 「龍嗣…?」  声が聞こえた方向へ顔を向けるが、やはり龍嗣はいない。 「龍嗣、どこ?  隠れてないででてきてよ…」 「璃音。 おいで」  腕を広げる気配がして、璃音は必死で駆け寄り、抱きついた。 「龍嗣、どこにいってたの?  見えないから、捜したんだよ?」 「そうか…、すまん。  さあ、弓削も待ってるから行こうか」 「ん…」  差し出された手に掴まり、真っ暗な中を二人で歩く。 『なんだろう…。  僕、何か大事な事を忘れてる…』  肝心な何かが思い出せなくて、璃音は龍嗣を見上げた。 「…どうした?  何だか、不思議そうな顔をして…」  クスクス笑う龍嗣は、不安そうにしている璃音を抱きしめて、額に口づけてくれる。  確かに声は龍嗣のもの。  なのに、繋いだ手の感触が違う…。  漠然とした思いのまま上を向くと、少しずつ龍嗣の顔が変わってきていた。 「―――――ッ!!」  龍嗣じゃない。  龍嗣じゃないッ!!  それは、愛しい男ではなく、璃音から両親や妹たちを奪った者の顔。  よこしまな想いを抱き、璃音から仲の良い兄を奪った者…。 「る…い………」 「璃音、どうした?」  この上もなく優しい顔をして、璃音を抱きしめている瑠維。 「なあ…、璃音は、兄ちゃんの一番大事な伴侶だぞ?  ずうっと、一緒だ」 「………ちがうよ、僕の伴侶は龍嗣だもん」 「馬鹿だなぁ…。  璃音は、兄ちゃんがたっぷり蜜を注いでやったじゃないか。  見てみろよ。  兄ちゃんの蜜で、そんなに愛を孕んじゃってるくせに」  下腹を撫でられると、甘い疼きが広がった。 「ちがう…、違うッ!!  僕が欲しいのは瑠維じゃな…」 「…兄ちゃんだけだろ…?」  着ていた服を剥がされ、深い闇の褥に押し倒される。  抵抗できないまま、璃音は最奥まで楔を打ち込まれた。 「いや――ぁ―――――ッ!!」  悲痛な叫びを上げ、璃音は瑠維に何度も何度も貫かれる。 「助けてっ、龍嗣っ、龍嗣ぃ―――!!」  ぬたりと深い闇の中、璃音の叫びは塗り込められていった。

ともだちにシェアしよう!