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「ん………っ!!」
深く寝入っていた筈の璃音が、むずがるように顔を背けた。
「璃音?」
腕の中の璃音は、ガタガタと震えて強張っている。
冷や汗が伝い落ち、背中も汗でびっしょりだ。
「ん、や…っ」
眉間に皺を寄せ、何かに怯えるような様子で。
「璃音、大丈夫か…?」
「や……っ、龍嗣…、龍嗣…ぃっ!!」
ほろほろと涙が零れ、体を丸めて縮こまる。
「私ならここにいるぞ、璃音のすぐ傍にいる。
大丈夫、大丈夫だ…」
背中を摩るが、一向に強張りがとけない。
「……っ!!」
ひくん、と、華奢な体が震えて、ギュッと閉じられていた目が開いた。
「璃音…!?」
「…っは…、はっ、ふ…あ…っ!!」
目が開いたものの、瞳は焦点を結んでいない。
「璃音……?」
「い…や……、いやっ、やだぁっ、離して、離してよぉっ!!
触らないで、やめてっ、来ないで…、や…っ、い……や…、うあ…、うあああ――――っ!!」
この細い体の何処にそんな力があるんだと思うような力で、璃音は龍嗣の腕を振り払おうとした。
自分を抱きしめているのが誰なのかも解らないまま、ガタガタ震え、歯をカチカチ鳴らし、強張ったまま叫んでいる。
「璃音、私だ、龍嗣だよ…」
「離して、離してえっ!!」
「璃音…、大丈夫、もう璃音を傷つける人間はいないよ…」
「いやっ!!離してっ、触んないでえっ!!
いや…、いや……っ!!」
細い体を抱きしめ、龍嗣は何度も背中を摩って宥め続ける。
「大丈夫…、璃音は大丈夫…。
怖くない…怖くないだろ……?
璃音のいる場所は、私の傍だけだ…。
大丈夫、痛くない…怖くない…」
ガタガタ震えている璃音の顔を上向かせ、龍嗣は額同士を合わせてみる。
「りょ……じ…?」
「そう。
よく気が付いたね…、偉いぞ、璃音…」
「龍嗣…っ」
ギュッと抱きしめ、荒い呼吸を繰り返す唇に、そうっと唇を重ねる。
「……んっ」
労るような、包み込ような優しい口づけに、璃音は涙が溢れた。
体の芯に残る異物感と、全身にある痛み。
『ごめんなさい…、龍嗣…』 瑠維に奪われてしまったのは、打ち消しようもない現実なのだと知り、龍嗣に対する申し訳なさで心がいっぱいになっていく。
『…龍嗣だけの僕でいたかったな…』
辛うじて残っていた璃音の心が、一気に砕け散った。
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