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「………」
「璃音っ!?」
突然強張りが解けてしまった璃音に、龍嗣は驚いて唇を離した。
「璃音…ッ!?」
開いた目は焦点がずれたままで、大粒の涙が零れ落ちる。
何度か軽く揺さ振ったが、反応一つ返って来ない。
「璃音、大丈夫か…っ!?」
クタリとなった体は、いつものように抱きついてきてくれない。
甘やかな香りはいつもと同じなのに、誘うようなものではなく悲しくて切ない香りに感じる。
何よりも。
目が合う度にはにかむ顔が、今は表情を喪い絶望に縁取られ、虚ろなものとなっている。
龍嗣一人だけを求め深く愛してくれた幼い心は、堪え難い現実を受け止めたものの、灼き切れてしまった。
呼吸するだけの虚無な人形と化した璃音を龍嗣は強く強く抱きしめるが、花のような笑顔も鈴のような声も、龍嗣に向けられる事はない。
「うああ……っ!!」
自分に向けられるのが余りにも自然だったもの全てが、永遠に喪われてしまったのだと、龍嗣は思った。
その頃。
小鳥遊に貫かれた瑠維は、体をはい上がる痛みに打ち震えていた。
「んあ…っ、あああッ!!」
殆ど慣らさないままで楔を打ち込まれ、脈を浮かせて昂ぶる雄刀で抽挿される度、鉄っぽい香りが立ち上る。
「ん…ッ、あ……っ、何、コイツん中…熱くて絡みついて来る…。
やべ…、溶かされそ…」
激しく腰を打ち付け中を擦りあげる小鳥遊は、突き入れる角度を変え、更に深く深く穿った。
「……っふ、……あ…ッ、あっ!!」
ベッドを軋ませ、バチンバチンと音を立てて突き立てる。
『痛いッ、早く終わってくれよ…ぉ…っ!!』
堪え難い痛みが脳天まで突き抜ける。
同意も愛情も伴わない行為は、瑠維を萎縮させ、何の悦びももたらさない。
ギシギシと軋む体と、それ以上に皹割れていく心…。
無理矢理繋がる事が、どれだけ一方的で傷つく事なのかを痛感して、より一層心が痛かった。
ほろほろ…
ほろほろ…。
とめどなく流れる涙は、貫かれる痛みゆえなのか、それとも…酷く傷つけてしまった璃音への贖罪の涙なのか…。
それすらも、今の瑠維には解らない。
「…んっ、…っはぁ…っ!!」
小鳥遊の体が痙攣し、瑠維を貫いた雄刀が硬く膨張する。
「…嫌だ…あああッ!!」
自身の最奥へと大量の白蜜が吐き出され、瑠維は悲痛な叫びを上げた。
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