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「ひっく………、ふ……っ、うぅ…………、えう……」  闇の中に、微かに泣き声が響いている。  吃逆混じりの慟哭だった。 「………誰…だ?」  瑠維が辺りを見回し捜してみても、姿は見えない。 「………痛い、痛いよぉ…っ」  濃密な闇の中にフワリと漂うのは、何なのだろう。  甘いのに、悲しい香りなのだ。 「痛い…痛い……痛いよ…」  ひたん…。  ひたん…。  何か液体が地面に落ちる音もする。 「…っふ、ああう…っ!!」  深い慟哭の声を捜し、何度見回しても、声の主は見つからない。 「………っ、痛い…、痛いよ…、うああ…っ!!」  ひとん。  また、床に伝い落ちた音がした。 「ひあ…、…っふ、あああ…っ!!」  ぴしゃん。  液体の塊が落ちたような音がして振り返ると、そこには小さな子供がいた。  全身傷だらけで、あちこちから血を流している子供…。 「………り…お…、璃音っ!?」  ほろほろと涙を零し全身から血を流す姿に、心臓が鷲掴みにされる。 「…っふ、う……っ。」  ぴしゃんっ。 「………っ!!」  紅い血が内股から床に落ちた。 「痛い…、痛いよ…」  痛さに堪えかね、へたりこむ体を抱きしめてやりたいのに、腕も足も言うことをきかない。  その、璃音の傍に、もう一人人影が現れた。 「………ひッ!!」  その人影を見て、璃音は引き攣ったような声をあげる。 「………璃音…」 「…いやっ!! いやだ、来ないで…来ないでッ!!  さわんないで………!!」  必死でかぶりを振り、触れようとする手を拒み続ける。  璃音が、もっとも愛しいと思う相手だというのに。 「いや………っ!!  さわんないで…、来ないで…、来ないで………ッ!!」  泣きながら、何度も何度も手を払いのけて、璃音は泣く。  全身から血を流しながら…。 「璃音…痛くない…。  もう、怖くないから…な?」  龍嗣に、労るように抱きしめられた瞬間、小さな体が激しく痙攣した。 「ひ…あ…ぁ……、ああああ―――――ッ!!」  断末魔のような叫びをあげ、璃音は全身を強張らせる。 「りおんッ!!」  ピシリとひび割れる音の後…。  カシャ………ン。  傷だらけの体が、小さなカケラになって粉々に割れた。  カシャ…ン、シャラ…ン…。  煌めく硝子のカケラのようになって、璃音が砕け散る。  愛しい龍嗣の腕の中で、妙なる音色を奏でながら、璃音は大気へ溶けていってしまった。  辺りに漂うのは、血の香りのみだった………。

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