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 頑丈なドアの前を通りすぎ、小鳥遊はリビングに入った。  そこにいたのは眼鏡を外した弓削…。  まだ怜悧な瞳のままだ。 「少しは頭が冷えたようだな…」  コーヒーを一口啜り、視線を携帯に戻す。 「で、向こうの様子はどうよ?」 「どうもこうも、最悪な状況に変わりはない。  今朝目を開けたものの、反応も無し。  伴侶が触れても人形のままだそうだ」 「エロ魔神でも無理かよ…」 「結び付きがかなり深かったからな…。  実際に突っ込まれているのを見られただけに、ショックも大きかったんだろう。  バスルームでも借りてきた猫のようだったらしいし、白川先生にすらビクビクしていたと、亮が書いてる。  鬼夜叉と懇意にしていたダイバーが試したが、完全に自我が虚無で手が付けられないと匙を投げたとも…」 「………もう、戻し様がないのか…?」 「解らん。  現在のダイバーの中に、治せる者がいるかもしれない。  まだ異能が顕れていない者の中にいるかもしれない。  または、潜れないにしても、夢渡りや夢繋ぎが出来る者がいるかもしれないからな…」  携帯電話をテーブルの上に置き、深くため息をつく。 「夢…繋ぎ…?」 「自分は潜れないが、複数の人間の意識を結び付ける事が出来る人間の事だ。  夢渡りは、他者の夢に入れる人間の事を指す。  晶は夢渡りだったがな…」 「ダイバーと渡りの間に生まれた子供なら、コイツ、出来るんじゃねえの…?」 「………へ?」  急に話を振られて、瑠維は面食らう。  両親の特殊能力を、瑠維はあまり知らされていなかった。  …と、言うより、母は救急救命病棟の医師で多忙であったし、何より乱暴者でもあったから、気がつかなかったのだ。  父も父で、異能の欠片も見た事が無かった。 「あの忙しい二人がダイバーだっただの渡りだっただの、今初めて聞いたのに、解る訳ねえだろ?  俺には、そんな特殊能力の欠片もねえし…っ」 「いずれにせよ、自我が崩壊している今はあれに近寄るな。  リミッターも壊れているなら、意識が無くとも伴侶との間を引き裂いたお前を殺しにかかるかもしれない。  あれは、鬼夜叉から色々引き継いでいる。  確実に一撃で仕留められるかもしれないから、絶対にやめておけ。  解ったな?」  弓削はキツく念を押した。

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