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「やけに念を押すけど、璃音はそんな暴れ方なんかしたりしないぞ?
人に殴りかかったりなんて出来ない奴だったし。」
不思議そうにする瑠維を見て、弓削は携帯の動画を起動した。
「なら、これを見てみるといい。」
差し出された携帯電話の画面には、璃音と弓削が映っている。
「………?」
向かい合わせで立つ璃音と弓削の距離は、2メートルほど。
数秒間合いを取り、先に仕掛けたのは弓削だ。
間髪入れずに繰り出される拳は、早過ぎてはっきり映っていない。
明かに手加減をしていない打ち合いだ。
その拳を、璃音は裏拳で受け流したり、かわしたりしている。
ピシュ!!
弓削が体制を変え、低い位置から蹴りを入れた。
璃音はフワリと飛び上がり、そのまま斜めの体勢で壁を駆け上がり、勢いを付けて弓削の後ろへと回った。
『ちぃっ!!』
綺麗な線を描く廻し蹴りを弓削が繰り出し、璃音はその蹴りをかわして前に回り込む。
ぱしっ!!
空いていた右手を捉え、璃音が地面を蹴る。
フワリ…。完全な一本背負いの型で、弓削の足が浮いた。
ザシュ…ッ!!
芝生の上に弓削が転がった所で、動画は終わった。
「………なんだ、これ…?」
アクション映画のような組み手をしていたのは、本当に弟なのか?
いつものんびりしていて、穏やかな璃音と掛け離れた、信じ難い画像…。
「璃音が鬼夜叉から教わっていた護身術だ。
これはまだ序の口だな。
次はこれを見てみろ」
今度は、向かい合う二人が、何かを手にしていた。
「……?…」
瑠維は目を疑った。
弓削と璃音が手にしていたのは、サバイバルナイフだったからだ。
「一応、刃は潰してある。
それでも、考えられない状況だろうがな…」
苦笑いする弓削が、再生ボタンを押す。
その動画も、信じられないものだった。
小さいナイフにもかかわらず、璃音は弓削の大振りのナイフを弾き飛ばし、逆手で持った得物で弓削の喉元をピタリと押さえたのだから…。
次々見せられる動画は、さらに考えられないものばかりで、瑠維の顔色は蒼白になっていった。自分の身長よりも長い棒を振り回し、もっと長い棒を持って周囲を取り囲んだ大人を、確実に一撃で仕留めていたり。
得物を持った大人を、素手で次々沈めていた。
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