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『……うっわ…。  そりゃ、またとんでもない事態になったもんだ…』  大まかな説明を終えた時、晶は深い溜め息をついた。 「こっちの状況は大体話した。  今度は、そっちの事を話してもらうぞ?  今、何処にいる。  これが、彼岸と此岸を結んでるなんて言わせないからな」 『………北海道だよ、龍嗣』 「………」 『とりあえず、僕らは生きてる。  荊櫻も双子を産んだあと、暫く体調を崩していたけど、少しずつ回復してきたんだ。  結果的に騙してしまったけど、生きてるのが解ったら、瑠維がまた壊れちゃうと思ってね』 「………事故も嘘か?」 『いや、あれは本当。  ただ、寸前で荊櫻が横からハンドルを切ってくれたから、最悪の事態を免れただけで…。  二人とも重傷だった。  だから、本家の爺さんと璃音がひと芝居打ったんだよ。  参ったな…、龍嗣、目茶苦茶怒ってるだろ』  一年振りに聞いた親友の声に、龍嗣は嬉しさ半分、怒り半分だった。 「当たり前だろうがっ!!  余計な芝居なんか打つから、事態がややこしくなったんだろう!?」 『不可抗力だったんだけどな…』 「で、今はどうなんだ。  移動できるのなら、早くこっちに来てくれ。  つか、来い。  すぐ来い、今すぐ来い!!  まごまごしている時間も惜しいんだっ!!  璃音の状態を診て貰わなきゃならないし、回復可能なのかどうかも確認して貰いたい。  可能な限り早くだ」 『解った。  夕方の便でこっちを発つよ。』 「空港に車を回しておく。  頼む…」 『龍嗣…?』 「なんだ?」 『瑠維よりも深く璃音を愛してくれたんだね?  ………嬉しいよ。 ありがとう』 「………礼なんかいらない。  早く来い」 『ああ』  プツ、と通話が切れた。  携帯を閉じ、暫し思案する。  先日、璃音が言っていたのはこの事だったのだろう。 『言わなきゃいけない事があるんだ。  すぐには言えないけど、必ず龍嗣に話すから』と言っていた。  あの時に聞き出せていたなら、事態は方向修正出来ていたかも知れない。  額面どおりに受け止めた自分に、忸怩たる思いを持っても、今の状況が好転する訳ではない。 「………適任は、あれだろうな…………」  龍嗣は、自分の携帯を手に取り、最も適任な男に連絡を取った。

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