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ポケットに入れた携帯電話が震えている。
表示を見ると「着信・エロ魔神」。
主従関係に疑問を持たれそうな呼び方で登録しているあたり、弓削の中の優先順位は崩壊しているかもしれない。
「ちょっと抜ける」
万が一、瑠維に聞かれたら困る案件でも良いように、防音の利いた部屋へ移動した。
一応、瑠維の足には簡単に外れない拘束具が取り付けてあり、リビングの柱にロープが固定されている。
小鳥遊が傍にいるので、逃げる心配も無いだろう。
「お待たせ致しまして、申し訳ありません。
弓削でございます」
『ああ。
中途半端な時間に連絡して済まない。
傍に瑠維はいるか?』
「いえ。
私一人でございます。
施錠したオーディオルームですので、瑠維に聞こえる心配は無いかと…」
あからさまにホッとしたように息をつく龍嗣。
『なら、いい。
手短に話そう。
荊櫻と晶が生きていた』
「………は?」
『いや、ホントに。
信じ難いだろうが、生きていた』
寝ぼけているのか、璃音が心配で壊れたのかこの男は!?と、暫し思案する。
だが、通話中に録音していた会話を、電話越しに聞かされたのだ。
疑うべくもない。
「解りました。
空港へは私が向かいましょう。
ついでに厭味の一つや二つ、それと説教もして宜しゅうございますか?」
『ああ、構わない。
説教なり意趣返しなり、ガッツリしてやってくれ』
「畏まりました。
では、時間を合わせて参ります」
『頼む』
「はい。では…」
通話を切り、暫し息を整える。
耳元でドクドクと鼓動が煩い。
鬼と伴侶が生きていた…それは、璃音の自我を縫い合わせる事が可能になったことを意味する。
璃音が戻れば、瑠維も再び狂い出すだろう。
「肌が馴染むには、あと少し…。
どちらが瑠維を噛むか、だな…」
廊下を歩きながら一人ごちる。
毎夜、仕置きと称して瑠維を嬲っている弓削と小鳥遊。
璃音への執着を少しずつ削り落とすように、二人の精を注ぎ込んでいる。
最初は必死で抗っているが、段々良い声で啼くようになった。
その瑠維をどうするのかも、鬼夜叉と晶に確認せねばなるまい。
あくまで瑠維には内密に事を運びつつ、璃音から身も心も引き剥がす必要があった。
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