358 / 454
・
「ん?」
小鳥遊は、ジーンズに突っ込んだ携帯を引っ張り出した。
『メール着信・鬼畜眼鏡』とある。
言わずもがな、弓削の事だ。
『同じ家の中にいてメールってな、どういうこったよ…』
一応、瑠維から見えないようにしてからメールを開く。
『今から、込み入った話しを流す。
直情馬鹿には見えないようにしろ』と書かれていた。
『了解。
大丈夫、ソファの上でうたた寝してるぜ』と返信する。
程なくして、メールが来た。
『先に言っておく、読んでも顔色を変えるな。
声にも出すな。
落ち着いて読め。
鬼夜叉と晶が生きていた』
「………?」
小鳥遊の目が点になった。
『何の冗談だよ、オイ』と返信する。
『あの事故で二人とも重傷を負った後、壊れた瑠維の目を逸らす為に死んだ事にして潜伏していたそうだ。
本家の爺と璃音も、口裏合わせてな。
で…、何気にエロ魔神が璃音の携帯を弄っていたら、晶の携帯に繋がったらしい。
一応、録音した会話を聞いたが、間違い無く晶の声だった』
『…鈍臭えと思ってたが、やるな、エロ魔神』
『鬼も体調が整って来たから、動けるらしい。
璃音を回復させる為に、夕方北海道から発ってくる。
俺は二人…、いや、双子を含めて四人を迎えに行き、氷室の屋敷へ回る。
あれの回復次第によるが、時間を掛けて馴染ませる余裕が無くなるかもしれない。
近い内に、完全に落とさねばならない状態になったと思っていい。
…どうする?
お前と俺、どちらが直情馬鹿を噛む?
それも決めねばならないぞ。
一応、鬼夜叉達にも確認を取るが…』
「………」
顔色一つ変えずに、内容をもう一度読み返してから返信する。
『とりあえず、璃音を優先しようぜ。
んで、鬼夜叉達の意志の確認を貰ってからになるだろうけど、噛むのは俺か?
つか、俺一人が噛んで間に合うのか自信が無ぇな。
そん時ゃ、お前も噛めよ?』
『お前と伴侶を共有か…?
御免被りたい所だが、勝算の見込みが無いなら仕方ない。
今夜は遅くなる。
最終的な判断は持ち越すにしても、ある程度は詰めておかねばならないだろうな…。
一応、腹積もりしておいてくれ』
『了解。
鬼と伴侶によろしくな』
複雑極まる心持ちのまま、小鳥遊は送信を終えた。
ともだちにシェアしよう!