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小鳥遊とのメールのやり取りを終え、弓削はガレージに向かった。
自分の愛車はチャイルドシートを着けると、大人が乗れるスペースが少なくなる。
「やはり、璃音が設計したハイブリッドタイプのワンボックスに替えておけば良かったな…」
小鳥遊の愛車を選び、運転席に座った。
微かな鳴動音がして、ハンドルとシートがドライバーに最適な高さと角度に変わる。
誰が乗っても快適な空間になる…。
これを設計したのが中学生だなどと、誰も信じはしないだろう。
弓削は、氷室邸に向かう事にした。
水上夫妻が生きていた…。
それは、璃音を戻せる可能性が示されたと言える。
逸る鼓動を落ち着かせようと、龍嗣は深呼吸を繰り返した。
「璃音…」
腕の中の璃音は、横抱きの形で龍嗣の左胸に耳を当てるように凭れている。
いつもだったら、龍嗣の肌の香りに酔い、蕩けるような表情をするのだが、殆ど伏せられた目には表情が無い。
四肢も力無くダラリとしている。
息をするだけの人形になってしまった璃音の頭を撫でてやり、額に口づけを落とした時…、控えめにドアがノックされた。
顔を覗かせたのは、弓削の弟の亮。
「失礼いたします。
旦那様、白川先生と千尋さんがいらっしゃいましたが、お通ししても宜しいでしょうか?」
「あ、ああ…。
構わない、通してくれ」
診察前に往診をしてくれるのは、本当に有り難い。
体勢を変え、龍嗣は璃音をベッドに寝かせた。
「失礼するよ。
どうかな、調子は…。
…本人より、貴方の方が、ね…」
渋面を崩さない白川に、龍嗣は驚く。
「あんまり寝てないだろう。
目の下のクマ…、昨日よりくっきりしてる」
「……っ」
ここ数日、よく眠れていない。
ほんの少しの変化も見逃したくなくて、ウトウトしては起きていた。
「今日は、二人とも注射だな」
鞄を置きながら、白川は苦笑いをこぼし、後ろに控えた千尋が気遣わしげに見ている。
「亮くんから聞いたよ。
璃音くんのご両親が生きていたと。
そちらの治療も始まるんだから、貴方がしっかりしていなくてどうするんです?」
基礎的なバイタルチェックを済ませ、白川は璃音に点滴をし、龍嗣にも注射をした。
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