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ズカズカと歩き回る荊櫻は、闇の砂の中に足を突っ込み、黒い砂を蹴散らして走り出した。
『璃音!!出て来いッ!!』
『…ひゃ…っ』
怖くなった璃音の欠片は、重機のように走り回る荊櫻が怖くて、黒い砂の中を逃げ回る。
時折、別の方向から逃げてきた欠片と出会うと、お互い身を寄せ合ってぶるぶる震えた。
『そこかあっ!!』
『きゃーっ!!』
狙い打ちしたかのように荊櫻の手が砂の中に刺さってきて、次々と璃音の欠片を捕まえていく。
荊櫻の形相に恐怖を覚えた欠片は観念したように出て来て、ニコニコ笑いながら立っている晶の元に寄って来たりもしている。
『うらあっ!!』
岩場の近くに追い込み、荊櫻が砂の中に手を突き込む。
引きずり出した手には、襟足を掴まれた璃音がいた。
『やだ…、離してようっ』
ほろほろ泣いている璃音の尻を軽く叩き、沢山の璃音を抱えた晶に放ってやる。
璃音の自我の欠片をあぶり出すと言うか、引きずり出し始めて一時間は経過している。
だが、見つけた欠片はまだまだ足りなかった。
『荊櫻』
『………なんだ?』
『一度、外に戻ろう。
君にも負担が大きくかかってるし、璃音にもダメージが残りそうだよ?』
『………』
『荊・櫻?』
『もう少しだ』
『………僕の言うことも、たまには聞いてほしい。
戻ろう』
『………………解った』
後ろ髪が引かれる思いはどちらも同じ。
晶自身も忸怩たる思いを堪え、荊櫻とともに引き上げて行った。
「「…………っ」」
荊櫻と晶が、璃音の中から戻ってきた。
だが、表情が苦々しい。
「どうですか?」
バイタルチェックをしていた白川医師が、晶に問い掛けた。
「ん………、荊櫻があぶり出したんだけど、まだ10パーセントくらいかな…。
時間をかける必要があるね…。
一応、捕まえた璃音は、戻ってくるときに閉じ込めて来たから大丈夫だと思う。
休み休み繰り返す事になると思うけど、望みが無いわけじゃない。
そうだろ?荊櫻?」
「ああ。
こうなったら根比べだ。
絶対捕まえてやる…。
とりあえず、今夜はこれで切り上げるが、明日からは本腰を入れるから」
渋面のままの荊櫻が、璃音の額を人差し指で突く。
「少し乱暴にしたから、璃音も疲れただろうしな…」
昏々と眠る璃音の額には、汗が滲んでいた。
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