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◇◆◇◆◇
「……ん?」
『りょーたん?』
「はい?」
辺りを見回しても、誰もいない。
『りょーたん、りぃたんのこと、すき?』
「りょーたんとは、私か?」
『うん』
鈴を転がしたような可愛らしい声がする。
「りぃたんとは、璃音の事か?」
『そうだよ。
ねぇ、りょーたん、りぃたんのこと、すき?』
「ああ」
『だいすき?』
「あぁ。大好きだ。
今までで一番好きになった。
きっと、死ぬまで…死んでしまっても好きなままだ」
『そんなにだいじ?』
「ああ…大事だ」
『じゃあ、りょーたんのこと、りぃたんのとこにつれてってあげる』
「………?」
『きぃたん、つないであげる…』
小さな紅葉のような手が、龍嗣の頬を撫でる。
『りぃたん、かくれるのじょうずだから、がんばってね?』
クスクス笑い、小さな手が離れると、辺りは仄かに暗い空間になっていた。
ひとん。
ひとん。
水琴窟のような音がする。
ひとん。
「璃音?」
サワサワサワ…
水面が波立つような音がして、龍嗣の足元がザワめいた。
「璃音、いるかい?」
サワサワサワ…。
周囲を満たしていた黒いヴェールがふわりと剥がれていき、目に飛び込んできたのは一面の青。
空の青のようでもあり、海の中の碧のようでもある。
淡い青、濃い青、深い青…。
綺麗な色彩が溢れる世界…。
『りょーたんには、どうみえる?』
「綺麗な青い色が溢れてる…」
『やっぱりね…。
りょーたんにだけは、きれいにみえるんだ。
たったひとり、りょーたんだけにしかみせたくないんだよ、きっと』
「………」
『こころがこわれてても、りょーたんだけはわかってる。
ねぇ、よこにあるかたまり、なんにみえる?』
つられて右を見ると、青い色の薔薇の花が沢山固まっている。
「綺麗な花の塊だよ」
『かきわけてみて』
言われた通りに掻き分けてみると、幼い顔の璃音がいた。
「璃音?」
『ぎゅーってしないと、にげちゃうよ』
幼稚園児のように小さい姿の璃音。
誘われるように抱き上げると、ほろほろ泣きながら抱きついてきた。
『そのまま、ぎゅーってしてあげて』
腕の中の璃音を抱きしめる。
幼い璃音は龍嗣の服を握り、鼻先を擦りつけて甘えた。
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