374 / 454

 丁度龍嗣が立ち上がった時、晶と荊櫻が入ってきた。  二人とも少し疲れの色が見え始めている。 「珍しいな、龍嗣が居眠りなんてさ。  あんまり気持ち良さそうだったから、そのままにしちゃったけど…」 「…すまん…。つい…な」 「いいんだよ。  定期的にマッサージしてるだけでも疲れるだろ?  それに、龍嗣に触れられてる璃音は、なんだか幸せそうだし。  寄り添って寝てるとこなんか、微笑ましい感じだったよ」  ニコニコしている晶の隣で、微妙な顔をしている荊櫻。 「………?  どうした、いかにも言いにくそうな顔をして。  そんなに姑が怖いか?」 「………自分より年下の女性を姑呼ばわりするのはどうかな…。  ま、それは置いといて…。  さっき、うたた寝している間に、璃音の中に連れて行かれた」 「「は………?」」  あんぐりと口を開ける水上夫妻。 「嘘じゃない。  小さい姿の璃音に会ってきたんだ」 「………っ!!  さあ吐け、すぐ吐け、今すぐ吐けっ!!  誰がお前を璃音に繋いだ!?  素直に吐かんと、水中バックドロップを食らわすぞッ!!」  龍嗣の胸倉を掴み、前後に激しく揺さぶる荊櫻。 「待て、待てと言うのにっ。  素直に言うから落ち着いてくれっ!!  繋いでくれたのは、雲母だっ!!」 「「…………は?」」 「信じ難いのは解る。  だが、確かに繋いでくれたのは雲母なんだ。  隠れている璃音を捜すのを手伝ってくれて、動けなくした後、隠した場所に目印をつけさせたんだ。  そうだな?雲母?」 「えうー」  璃音の横で、ニコニコしている雲母を、晶が抱き上げた。 「雲母、本当かい?」 「あうー」  龍嗣に手を伸ばし、じたじたする。 「さっき、合図を決めた。  雲母にとって正しい答えなら指を握る、違ったら離す…そう決めた。  そうだな?雲母。」 「えうー」  きゅ。  雲母は龍嗣の指を握る。 「さっきのは気のせいか?」 「だぁうー」  指を離す。 「君を抱っこしてるのは、パパだな?」 「きゃあうー」  きゅ。  再び指を握った。 「………参ったな…。  意外に近い所に繋ぎがいたなんて…。  雲母、パパとママが璃音の中にいる時に、龍嗣を繋ぐ事は出来るかい?」 「あいー」  きゅうっ。  今度は、晶の指をキツく握る。 「晶、これならどうにかなるかもしれんぞ?」  荊櫻の瞳が煌めいた。

ともだちにシェアしよう!