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なんとなく、初めて璃音と体を繋いだ時の事を思い出す。
恭しく、捧げるように唇を重ねてくれた。
『全然タイプじゃないのに、抱かせてしまってごめんなさい…。
僕、体も小さいから、氷…、龍嗣…の事、を、きっと満足させる事は出来ないけど、精一杯…愛して…いいですか…?』
そう言った璃音。
小さい体に捩込んだ自分に、愛を囁いてくれた。
『龍嗣が、僕の初めての人で良かった』
好みじゃないと切り捨てたのに、きっちり味わい尽くした龍嗣を受け入れてくれた。
『ねえ、龍嗣…?
僕の全ては龍嗣のもの。
カラダも、気持ちも、全部全部、僕は龍嗣だけに捧げたい。
僕が持ってる全てを、龍嗣に奪われたい…。
だから、今はね、こうして肌を重ねてくれるだけで幸せだよ…? 例え龍嗣の気持ちが、僕に向いてなくて、瑠維に向けられていても…。
瑠維の代わりに抱かれてても。
今すぐじゃなくていい。
いつか龍嗣の気が向いて、僕を愛してくれる気持ちになったら、僕の全てを奪ってね…?』
健気に囁いてくれた璃音。
龍嗣の肌を覚え、唇と舌を覚え。
体を繋いだ時には、甘やかな声で啼いてくれた…。
龍嗣との濃密な愛を覚えて、夜ごと愛らしく美しくなっていった最愛の獣…。
龍嗣のためだけに、甘く啼き。
体を繋ぐ度に魂が震えるほどに蕩けて、愛を囁いて、更に極上の高みへといざなってくれた。
「幼いくせに、私をベッタベタに甘やかしてくれたからな、君は。
そうだな…。
君が目覚めたら、沢山キスの雨を降らせて、少しだけ困らせてしまおうか?
それとも、腕の中に抱き込んで、ぎゅうぎゅう抱きしめまくって、閉じ込めてしまおうか…?
誰の目にも触れないように、どこかへ隠してしまおうか…。
璃音が呆れてしまうくらい、今度は私がベッタベタに甘やかしてしまおう…。
そしたら君は、鈴を転がすように笑ってくれるだろうか…」
艶やかな髪に口づけ、少しだけ悲しい色合いが混じった璃音の香りを嗅ぐ。
心の傷が癒えるまで、いつまでも待ってみせる。
傷付いた璃音を包み込んで、不安が無くなるまで愛を囁いていこう…。
龍嗣は、もう一度璃音の額に口づけてから、ゆるゆると眠りの淵へと滑り込んでいった。
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