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それから数日…。
捜しきれない璃音の自我は、残り一つのままだった。
「どれだけ拗ねてるんだ、こいつは…ッ!!
他の欠片を見る限り、逃げまくってるのは核の筈なんだが…。
こんなに厄介なケースは初めてだ…っ」
苦々しい表情のまま、荊櫻が呟く。
「核…?」
「ああ。
そうとしか思えない。
今まで見つけた欠片で確かめた。
お前に対する執着や恋慕の情の度合いが、忍から聞いた璃音の懐きっぷりには見合わないんだ。
だから、逃げまくってるのは、お前に対する愛情や執着の大部分を持ってる核だとしか考えられない。
核が無ければ、繋ぎ合わせは出来ないんだ…」
「………。
それだけの執着があるなら、捜し回る私にも姿を見せないのは何故なんだ…?」
「瑠維につまみ食いされたから、合わす顔が無いとでも思ってんだろ…。
………ったく…、誰に似てんだ? この強情っ張りは…っ」
忌ま忌ましげに、璃音の額を指で弾く荊櫻。
強烈なデコピンだったが、反応一つ返らなかった。
四人懸かりの捜索を終え、水上夫妻と雲母は部屋から引き上げようとしている。
龍嗣は寝る前のストレッチをしようと璃音を抱き上げて、微妙な違和感を覚えた。
「……………?」
なんだろう…。
艶やかな髪も、虚ろな顔も、いつもと変わらない。
少しずつ璃音の肌に触れていき、ふと気づく。
「………血の……匂い…?」
「「………っ!?」」
晶が、ベッドの上に雲母を置き、璃音のパジャマの袖を捲り上げた。
「……………っ、璃音っ!!」
腕には、薄いピンク色をした蔓状の模様が浮かび上がり、所々に血が滲んでいる。
「やめなさい、璃音っ!!
自分を壊すなんて、無茶をするんじゃないっ!!
璃音っ!!
そんな事をしたら、龍嗣はどうなるんだ…っ!?」
血の気が引いたまま、晶が璃音の頬を軽く叩く。
その間にも、蔓の模様は腕をはい上がる。
もう片方の腕も、両脚も同様だ。
「晶…、何が起きてるんだ!?」
「自分で核を壊そうとしてる。
しかも、自我と一緒に、体にも攻撃してるんだ…。
多分、璃音は、このまま死ぬつもりでいる…っ」
「……………っ!?」
璃音が………死ぬ!?
ザァァァァァァァァッ!!!!
龍嗣は、全身から血の気が引いていく音が聞こえた気がした。
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