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「璃音っ、やめるんだ!!
自分で自分を殺すなんて、私は絶対に許さないぞ!!
頼むっ、頼むからやめてくれッ!!」
龍嗣が悲痛な声で璃音に呼びかけ、必死で体を揺さぶる。
掌にも蔓模様が延びてきて、ジワジワと血が滲んでいる。
「やめろッ!! 璃音っっっ!!」
荊櫻が頬をきつく張っても、璃音は深く眠ったまま起きる気配もない。
ただ、表情だけは違った。
少しずつ眉間にシワが入り、苦悶の様相を呈しはじめ、目元は涙が零れている。
ジワ………。
パジャマの腹部にも血が滲み、呼吸が荒くなってきた。
「璃音っ!!」
「ぐ…っ、かは………ッ!!」
深く咳込んだ瞬間、花びらのような口から鮮やかな紅い色彩が漏れた。
「な………っ!?」
それは、血液…。
「や、やめろ!!
それ以上自分を責めるんじゃないッ!!」
龍嗣が上半身を抱き上げたのと、時を同じくして。
ごぶ…ッ!! がはぁ…ッ!!
大量の血液が、溢れた。
「………なんて………ことを…」
弟の亮(とおる)からの連絡を受け、さすがに弓削も携帯電話を取り落とした。
「どうした?忍…。
璃音の自我の話しじゃなかったのか?」
血色を失った弓削を訝しんだ小鳥遊が覗き込む。
「縫い合わせなんて悠長な話しじゃない…。
璃音が…、璃音が自分の体ごと、自我の核を攻撃してるそうだ…」
「………なんだと!?」
「体中に蔓みたいな模様が浮き出て、あちこちから血が滲んだのを、エロ魔神が見つけた。
その直後に、大量に吐血して…………、いま、水上系列の病院のICUにいると…」
小鳥遊も血の気が引いていく。
体を無理矢理奪われ、自我を砕いただけでもダメージの深さが窺い知れるというのに、生身の体ごと自分の自我の核を壊そうとするなど、さすがに予想がつかなかった。
「どうする、忍。
俺達は行かなくていいのか?」
「………ほぼ自殺のような事をしている璃音の傍に、瑠維と関わりのある人間を置かない方がいいだろうと、白川先生が言っているそうだ。
敢えて、今の内は待機しているべきだと………。
瑠維にも伏せておけと言ってたが………、まずいことに、すっかり聞かれてしまったな…」
「………は?」
自嘲気味の弓削の視線を辿った先…。
二人の視線の先には、真っ青になった瑠維が立っていた。
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