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未来が予測できたなら、自分は自制できたろうか…?
こんなふうに璃音が死を選んでしまうなら、自分の欲望を押さえ込むことができたろうか…?
「………俺…、俺………っ」
言いたいことが沢山あるのに、舌が縺(もつ)れて言葉にならない。
「こんなふうになるなら、璃音を強姦しなければ良かった。
傷つけないように、優しい兄であり続けてれば良かった。
…そう思うんだろ?」
ひくん。
瑠維の咽が鳴る。
思っていたそのままの事を言い当てられたからだ。
「璃音を甘噛みしてなければ、今の状況になっていなかった。
自分が誰かの求愛を受け入れて、伴侶を決めてしまってたなら、あんなふうに無理矢理奪ったりしなかったかも知れない…。
そう思うんだろう…?
だがな、そんな後悔は意味が無い」
「………っ!!」
「実際、璃音がエロ魔神を選んで、お前が璃音を奪ったからこそ、俺達はお前を食って求愛したろ?」
「お前が暴走してなきゃ、俺達は相性抜群の伴侶を得られてない。
結果論になるが、全部が全部最悪な局面じゃねえんだよ」
「……でも…、俺………っ」
二人の伴侶を得た代わりに、肉親を死に追いやっている自分…。
最上の幸せと、最悪の事態…。
それで釣り合いが取れているのだとしても、両極端なのではないのか…?
「まだ、確実に璃音が死んだ訳じゃない。
境界線なだけだ。
あれを止める為に、エロ魔神とダイバーが潜って、自我の核を引っ張り出す気だと亮が言っていた。
どれだけ覚悟を決めたとしても、璃音は伴侶に逆らえない。
自分の意識の中にエロ魔神がいる状態で、あれは自殺など出来はしないからな…」
「………っ」
璃音が死を求めながら、伴侶だけは守ろうとするだろうか…。
いっそ、龍嗣を道連れにして死んでしまうんじゃないのか…?
思うのは、最悪な方向ばかりだ。
「今は、エロ魔神に任せてやれ。
あいつの自我のほとんどを見つけたのがエロ魔神なんだからよ…。
ずっぷり啼かして甘やかして来たんだ、案外、エロ魔神につられてホイホイ出てくるかもしんねえだろ?」
「………」
「一応、俺も医者だからな。
こっそり、様子を見てきてやるよ。 な?」
へたりこんだ瑠維の前にしゃがみ、小鳥遊が笑ってみせた。
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