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苦々しい顔をする荊櫻の前で次々蔓を解していく龍嗣。
龍嗣が触れようとする瞬間、鋭い棘が姿を消していく。
「………璃音ッ!!」
奥の方に、青ざめた顔が見えた。
「……………」
悲しげに眉をひそめた傷だらけの顔…。
瑠維に散らされた時のような、儚げな顔だ。
「璃音ッ!!
私だ、解るかっ!?」
必死で蔓を引きながら、璃音に向かって呼び掛ける。
「………龍………嗣?」
うっすらと開けた目は、未だ夢の中のようだ。
「璃音、待ってるんだぞ?
すぐにそこから出すからなっ!?」
「だめ…。
そんなことしたら、龍嗣が怪我しちゃうよ…」
「怪我?
触る端から棘が無くなってくのに?」
「え………?」
龍嗣が傷ひとつ無い掌を見せると、璃音が驚いている。
「お前、自分には棘をブスブス刺しておいて、エロ魔神は手加減か?
どれだけこのオッサンに篭絡されてるんだ…」
呆れ気味に呟く荊櫻を見て、璃音が目を丸くした。
「…お、か…あさん……?」
ズビシッ!!!!
「いっ、痛ぁっ!!」
呆然としている璃音の額に、荊櫻が渾身のデコピンを食らわせた。
実体の無い状態なのに、かなり痛いと感じる程の一撃…。
璃音の目には、涙が浮かぶ。
「馬鹿なのか、お前は。
つか、馬鹿そのものだな」
「………っ」
「つまみ食いされたのは仕方ないとして、自我を砕いたまでは許す。
だが、無茶をしまくって周りを巻き込んだ挙げ句に、勝手に自殺まではかるだと?
馬鹿にするのも大概にしろっ!!
大体、瑠維を止めるから任せろと言ったのは、誰でも無い、お前自身じゃなかったのか!?
うまくいかなかったからリセット代わりに死のうなんて、そんな事を許すわけがないだろうがっ!!」
ごぉんっ!!
荊櫻の拳が璃音の脳天に炸裂し、あまりの強烈さに龍嗣が硬直する。
以前、弓削が龍嗣に教えた事があった。
大の大人でさえも沈めた、最凶最悪を誇る荊櫻の武器…。
一族の皆が恐れ、震えあがった拳が振り下ろされたのだ。
『凄い…。
完全に璃音が目を回している…。
これが噂の"ピカリゲンコツ"か…。
いやはや、初めて見たが…………。
中々恐ろしいものだ…』
鬼夜叉というより、母親としての怒りを目の当たりにし、龍嗣は口を挟みかねていた。
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