407 / 454
・
「死ぬのはお前の自由だ。
だがな。
砕け散った自我を片っ端から拾ったのは、紛れも無いエロ魔神なんだ。
仕事も何もかも放ったらかしにして、お前にかかりっきりになってたんだぞっ!?
それを気付きもしないで、勝手をするなんてどういうつもりだッ!!
この馬鹿があっ!!」
ごぉんっ!!
再び、荊櫻必殺のゲンコツがお見舞いされた。
「………は、はうぅ………っ」
頭の周りに火花やヒヨコが散っているのだろう。
璃音は頭がグラグラしている。
改めて、龍嗣は荊櫻の恐ろしさを目の当たりにし、決してこの女性だけは怒らせるまいと心に決めた。
「………ご、ごめんなさい…」
すっかりうなだれて、しおしおの璃音。
涙目で、そうっと龍嗣を伺うと、苦笑いする優しい眼差しと目が合った。
「………龍嗣、ごめんなさい…。
僕、瑠維に取られちゃったから、龍嗣に合わす顔がないってしか思えなかったんだ。
だって、龍嗣がいっとう大事だから、龍嗣だけの僕でいたかったんだ…。
ごめんなさい、もう僕…っ」
ボロボロ泣く璃音の頭を、龍嗣はゆっくり撫でる。
「あの時にも言ったろ?
こんな事くらいで揺らぐようなヤワな愛情じゃない。
野良犬に噛まれたようなものなんだ。
君を嫌いになる筈がないだろう?
簡単な気持ちで君に指輪を渡した訳じゃない。
君を永遠に愛していくと思えたからこそなんだからな?」
チュ…。
涙に濡れる頬に口づけると、次々涙が零れ落ち、頬を更に濡らしていった。
ともだちにシェアしよう!