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「じゃあ、縫い合わせをするからな…?」
龍嗣が落ち着きを取り戻した璃音の本体を膝に乗せて座り、荊櫻がバラけた自我を溶け込ませていく。
龍嗣が傍にいることもあり、自我達は何一つ拒む事なく縫い合わせに応じた。
「だいぶ縫い合わせできたな…。
もう少しで終われそうだ」
「璃音、辛くないか?」
「大丈夫………。
龍嗣が手を握ったり、抱きしめてくれてるから…。
辛くないし、きつくもないよ…」
ニコッと笑う顔は、子供子供したものから、少し違うものになっている。
それは、純真無垢な子供だった璃音が、更なる変化をしようとしている前兆なのか…?
重態に陥っている体が回復した時に、どんな璃音として目覚めるのか…。
龍嗣にも予想がつかない。
「どんなに汚されようとも、一番大事な存在に変わりはない。
璃音以外は要らないんだからな?
ちゃんと覚えておくんだぞ?」
そう耳元で囁き、ぎゅうぎゅう抱きしめる。
「姑の目の前で、あんまりイチャイチャすんじゃない。
本気でどつくぞ」
自我の欠片を抱っこして、荊櫻が半ば呆れ返った。
自滅しようとしていた自我の核を捕まえ、阻止をして。
自我の縫い合わせを始めて、どのくらいの時間が経ったのだろう…。
「じゃ、これが最後…だな」
荊櫻が両手で捕まえた自我の欠片を、龍嗣が一度膝に乗せた。
今の璃音とは少し違う、幼い顔立ちをしている。
本体の隣に座ったからか、少々居心地が悪そうにしているのが、何だか可愛らしい気がした。
「あ…、あの…」
「ん?」
「捕まえたときに、甘噛みしてくれてありがとう…。
ぼくら、みんな、あなたの事が大好きだから、とっても嬉しかったよ…。
一人一人が戻る時にも、抱きしめてくれてたの、みんな嬉しかったと思う。
ホントの璃音の中に戻っても、絶対忘れない…。
元の一個の自我に戻って、目が醒めた時に、きっと、もっともっとあなたの事…龍嗣の事が、好きになってると思うから、その気持ち、受け入れてくれる…?」
「ああ。
沢山の璃音を捕まえた事も、一人一人に甘噛みした事も、全部忘れない。
目覚めた君に、今までよりも深い愛情を注ぐと、約束するよ」
頬に口づけられた幼い容貌の璃音は、少し切なそうな表情になった。
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