416 / 454

「写真を預かってきたけど、見るかい?」 「…?」 「いまの瑠維や弓削、小鳥遊さんの写真なんだけどな」  "瑠維"と聞いただけで、心臓がバクリと跳ねた。 『コワイ…。 ……イヤ…』  自分を嬲った相手の顔を見るのは、本当に怖くて仕方ない。  だが、弓削と小鳥遊の事も気になる…。 「う…ん」 「どうぞ」  手渡されたタブレット端末の画面に映し出されたのは、確かに弓削や小鳥遊だ。  璃音に向けてくれていたような表情を、腕の中に抱き込んだ瑠維に向けている。  むくれた表情をしていた筈の瑠維が、次第に表情を変え、口づけを受け入れ、蕩けるような顔になっていく。  誰の想いも受け入れなかった瑠維が、弓削と小鳥遊に愛されて幸せな表情になっている。  自分が知る瑠維より、面差しが少し変わったような気がした。 「動画も幾つか入っていたよ。  見てごらん」 「…うん」  動画を起動すると、初めに弓削が映った。 『玲、ホントに録画出来てるんだろうな…?  お前は、医者の癖に機械音痴だから…』 『うっせえな、ちゃんと映ってるから心配すんな。  ほら、さっさと喋れよ』 『こほん。  あー…、あの、璃音様?  ホントに映っておりますか?  弓削でございますよ?』 「映ってるよ、弓削さん」  可笑しくて、つい笑ってしまう。 『お目覚めになられたと聞き、弓削は嬉しいです。  いきなり、私と玲が伴侶を決めた件、驚かれたと思います』 「………ん。  すごく、驚いたよ…」 『最初は、あの直情バカ…、いえ、瑠維にお仕置きをしておりました。  その過程で、少しずつ気持ちが傾いて行ったのです。  決して、誰かに強要された訳でも、貴方を振って情緒不安定になった訳でもないんです』  穏やかな顔は、以前璃音へ向けてくれたものと幾分違う。 『素直で一途な貴方を、生涯かけて大事にしたいと願った事、今も後悔しておりません。  その気持ちを、瑠維へ向けてしまった事…、お許し下さいますか』 「弓削さんが、本当に幸せなら…それでいいよ…」  ふっ切れたような笑顔は、今の弓削が幸せなのだと物語る。  自分が受け入れる事が出来なかった想いを、受け取る相手が出来た…。  確かに、複雑な思いはあるけれど、それを祝福したいという気持ちもある。

ともだちにシェアしよう!