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 季節は少しずつ移ろいでいく…。  春になり。  リハビリも一段落し、退院を許され…。  体調が安定してきた。  夏になり。  予定が延びてしまっていた大学へのシフトも完了したのだが、璃音は高等部への進学もした。  学力的には問題が無かったため(学園側から出されていた膨大な量のレポートを出した事もあり)、元々のクラスメートと同じ、二年生クラスへ編入をした…。  秋になり。  懐かしいメンバーとの学園生活にも慣れて。  修学旅行にも参加する事ができた。  冬になり。  学園祭…。  そして。  璃音が目覚めて一年が経ち…。  再び春になり。  璃音は高等部の三年生へ進級し…。  夏になった…。 「お帰り、龍嗣…っ」  階段を駆け降りてきた璃音が、龍嗣を出迎えた。 「ただいま、璃音。」  頭を撫でると、蕩けそうな、それでいて少し辛そうな顔をする。 何も無かった頃は、無邪気に抱きついて唇を重ねたものだが、今は少し違う…。  広げた腕の中に怖ず怖ずと入って来ても、それ以上はしない。  …いや、できない………。  寄り添う背中に手を回すと、途端に体が硬直してしまう。 「あ……、ご、ごめんなさい…っ」 「いや、いいよ…璃音」  こめかみに口づけを落とし、腕の中から解放する。 「璃音が元気でいてくれたら、今はそれでいいんだ」 「……………」  申し訳なさそうにするのは、訳があった。  瑠維の一件から、未だ二人は体を繋いでいないのだから…。  回数は減ってきてはいたが、夜になるとフラッシュバックを起こし、パニックに陥ったり、過呼吸になったりする。  それは、璃音が龍嗣を受け入れようと無理をした時に起きる事が多かった。  龍嗣はそれに気づいていたから、璃音の心の傷が癒えるまで待つ気でいたのだ。  …心の傷は、容易に塞がるものでは無いから…。  原因の一つ、事件現場の氷室邸から引っ越し、同じ市内にある別邸で暮らしているのだが、なかなか改善には至っていない…。  そんな日々の中、璃音の父である晶からメールが入った。 「荊櫻と赤ん坊を、助けて欲しい」  ……………と…。

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