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「……え……?」  メールを見ていた璃音の表情が曇った。 「………どうした?  晶からのメール、何が書かれてたんだ?」 「母さんが…、入院したって…。  緊急に手術して、赤ちゃんを出さなきゃいけないって…」 「…荊櫻が………?」  コクリと頷く璃音の顔は、蒼白くなっている。  荊櫻は現在4度目の妊娠をしていて、あと1ヶ月程で出産の予定だった。  双子だが、経過は順調な筈で。  それが一転緊急入院になったという…。  理由は詳しく書いていないが、どうも胎児に異常があるようだ。  龍嗣は、カタカタ震える璃音をソファーに座らせると、晶へ電話をかけた。  時間は少しだけ遡る。  キリキリと痛む目元を押さえ、晶は沈み込むように椅子に座った。  璃音には伏せていたが、担当医師と荊櫻自身の見立てでは、胎児の片方に異常があり、それは心臓に重症の要因があるらしい。  高解析エコーで調べて解ったのだが、幾つもの厄介な症状が重なっていた。  心中隔欠損…心臓の中の仕切りに異常がある。  大抵は心室か心房のどちらかに発生するのだが、胎児の心臓は両方の仕切りが見えないらしい。  また、心臓と肺を結ぶ血管が逆転していて、心臓を取り囲んで血液を送る環状動脈を挟み込んでしまってもいる…。  管理入院の後、帝王切開をしてNICU(新生児集中治療室)で状態をキープし、手術に堪えられる体力が付くのを待つ計画でいたのだが…。  予想外に胎児の心臓の状態が悪化し始めたという…。  そして今日になり、肺動脈自体が閉じたような状態へ変わり、心臓の動きが弱くなりはじめた。  一刻の猶予も無い程の事態だ。  緊急に手術をしてしまわなければならなくなったと言われれば、晶自身、心穏やかではいられない。  水上系列の病院から、産科・外科・小児外科・小児科・小児循環器のエキスパートをかき集めて医療チームを立ち上げているが、荊櫻も不安を隠し切れていない。  大体、苺や小粒の蜜柑並に小さい臓器に異常があるのだ。  難しい手術になる。  未だ瑠維とのことを克服しきれてない璃音に心配をかけまいと隠してきたが、黙っているにも限界がある。  何より、取り出した胎児を入れておく人工子宮の調整が、思うように進んでいなかったのだ。  頼みの綱は、璃音以外にいなかった。

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