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璃音に助けてほしいとメールをして暫し…。
深い深い溜息をついた時、手元にあった携帯電話が鳴った。
「もしもし…?」
『もしもし、晶か?』
聞こえてきたのは、龍嗣の声だった。
『何があった?』
「済まない。
未だ本調子じゃない璃音に負担をかけたくなかったんだが、どうしても助けて貰いたいんだ…。
璃音にしか…出来ないんだよ…」
晶は、かい摘まんで胎児の状況を話した。
その間、向こうから慌ただしい物音がしているのは気のせいなのか?
『晶…、何処に行けばいい?
璃音なら、きっと自分を立て直してやり遂げられる筈だ。
教えろ。 今すぐに向かうから』
「龍嗣…」
『言え』
「水上系列の……青海(おおみ)高度メディカルセンター…」
『任せろ。
5分で駆け付けてやる。
ヘリポートの準備をしておけ』
「………っ」
プツリ。
通話が切れ、晶は弾かれたように走り出した。
弓削が操縦するヘリの中、龍嗣は璃音をきつく抱きしめて言い聞かせていた。
荊櫻の手術は大丈夫だ。
双子も間違いなく無事に生まれることが出来ると。
「ただし、一人を入れておくのが人工子宮なだけだ」
「………人工子宮…」
「そうだ。
君が眠ってしまう前に手がけていた、宇宙ステーションの医療ポッドの小型判だ」
…眠る前…
そう聞いただけで竦み上がる。
『イヤ…、いやだ……ッ!!』
『璃音、兄ちゃんが綺麗にしてやるよ…』
『うあああああ……ッ!!』
ズクリと体が軋む。
フラッシュバック発作がジワジワと侵食を始める…。
「璃音」
「……………っ!!」
ガッシと肩を捕まれて、璃音の意識が引き戻された。
「璃音。
わかるか…?
あの人工子宮は、少し気難しい。
調整しながら君のきょうだいを収容し、バイタルラインを確保しながら、カテーテルを入れなきゃいけない」
「………」
「その調整を出来るのは、開発した君一人だけだ」
「………」
「閉鎖してしまった肺動脈を開き、バイパス手術をするまでの体力がつくまで、安全を確保するんだ。
怖くても、体が竦み上がってもやり通して貰う。
わかったな?」
「はい……」
「いい子だ」
恐る恐る答えた璃音の額に口づけが落とされる。
ヘリは、メディカルセンター上空にさしかかろうとしていた。
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