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 滅菌した手術着を着て、璃音と龍嗣、小鳥遊が準備室へと移動していた。 「璃音、何故私を同席させようと思ったんだい?」  両手を消毒しながら龍嗣が璃音を伺う。 「………完全に腹を括れた訳じゃない…でしょ……?」 「………?」 「自分では、かなり克服出来て来てるって思ってた。  …だけど、さっき実際に玲の顔を見てぐらついてしまった…」 「璃音…?」 「もしかしたら、シンクロしている時にもグラついて、僕はおかしくなるかもしれない…。  だから…。  だから、龍嗣にいて欲しいって思った……」  重症の心疾患の未熟児を受け入れるには、小児専門の外科医である小鳥遊は外せない。  しかし、人工子宮を設計した本人であり、オペレーターでもある璃音も外す事は出来ない。  どちらかを外せば、成功率は格段に落ちてしまう。  璃音が折り合いを付けるしかないのだ。 「龍嗣に最初から甘えたり、頼るつもりじゃないんだ。  僕も最大限頑張る。  でも…、もし、僕が制御出来なくなったら………、その時には龍嗣に言って欲しいんだ…。  龍嗣にしか出来ない事だから」  精神的にぐらつき、シンクロが解かれるという、最悪の状況を回避するには。 「…"シンクロしろ"って」 「……………命令しろということか…?」 「…うん」  水上の人間は伴侶の命令に逆らえない。  トランス状態であったとしても、伴侶が命じた事を実行してしまうほどに。  ましてや、璃音にとって龍嗣は命を懸けて助けてくれた相手だ。  結び付きは深く固い。 「俺は一向に構わないぜ。  お前が確実に赤ん坊を受け入れて安定した状態に持ってけるならな。  どうする? 氷室さん」 「……………解った」 「龍嗣………」 「璃音。  もしかしたら、君が今回の事を成しえたなら、瑠維に対するトラウマが解消できるんじゃないか…?  これだけは、私がどうこうしても解決できない問題だし。  だから、本当にそういう事態に陥ったなら、君に声を掛けるよ。  ただし、私はあくまでも保険だ。  ………………私が知っている本当の璃音は、弱くなんかなかった。 だから、君はやれない筈なんかない。  やれる筈だ。  いや………、やるんだ」 「はい………っ」  不安に揺らいでいた瞳に、少しだけだが力強さが宿っていた…。

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