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 人工子宮のコントロールブースは二つ。  手術室に近い方がメディカルブース、奥がシンクロブースになっていた。  メディカルコントロール側に小鳥遊、シンクロブースには璃音と龍嗣が入っている。  刻々と送られて来るデータを読み、璃音は胎児とのシンクロを深くしていく。  少しずつゲージが上がり始め、小鳥遊の指示を受けた医師チームが手術を進めていく。  龍嗣は後ろから璃音を見守るしかない。 「………玲、心臓のデータと内部の解析画像を送るから、実像に起こした方を確認して」 『おう』 「腕にバイタル繋ぐより、臍帯に直接繋ぐ方が確実みたい。  こっちで人工臍帯を作ったから、転送するよ」 『ああ。  じゃ、こっちで繋ぐぜ。  シンクロ率上がってる。  あと少しで受け入れだから、気ィ抜くんじゃねえぞ?』 「………うん。  あ、カテーテル、もう一段階細い方がいいみたい。  血管のデータと合わせてみて」 『おう。  こっちのデータも共有してくれ』  刻々と変わるデータをやり取りしている二人の様子を、龍嗣は静かに見ているだけだ。  そっと視線を移せば、手術室の上の控え室から事態を見守っている晶と弓削が見える。  微妙に見えづらい場所にある人影は瑠維なのだろう。  三人とも、荊櫻を見守っているというより、シンクロブースで忙しなくデータをやり取りする璃音を心配げに見ているようだ。  特に晶は、痛々しいほどの表情をしている。  未だ復調していない璃音を引きずり出す形になった事を、深く悔やんでいた。  手術室に入る前も璃音と龍嗣に何度も詫びていたが、璃音自身が解っているのだ。  危機に瀕したきょうだいを救うには、自分が小鳥遊に合わせなければいけないことも。  また、今回の事がトラウマを乗り越える最大で最後のチャンスになるだろうことも。  だから、晶に対して詫びないで欲しいと頼んだのだ。  璃音を先に手術室へ送り出し、龍嗣は晶にきっぱりと言い切った。 「あれは、いつまでも誰かに守られているような弱々しい人間じゃない。  お前が最高の教授陣を揃えて育て上げた、最上級のエンジニアであり、科学者の筈だ。  自分の息子を信じないで、誰が信じる?  違うのか?」と。  今も、不安げに揺らぐ晶に対して、龍嗣は力強く頷いてみせた。

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