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担当医師が操作しやすいよう、璃音は次々と調整していく。
残っていたエンジニア達の癖を抜き取り、重複していて効率の悪かった部分を書き換えて。
担当医師に合わせた操作モードを打ち込み終えた時には、もうひとりの赤ん坊も荊櫻も手術室から移動した後だった。
「………ふぅ……」
深く息をつき、璃音は後ろにいた龍嗣に凭れかかった。
後ろから抱きしめると、術着の下は汗でびっしょりに濡れている。
「お疲れ様、璃音」
「ありがと、龍嗣」
こめかみに口づけを落とすと、穏やかな笑顔になった。
揺らいでいた瞳は不安が取り払われ、落ち着いたものになっている。
「チクショ、慌てさせんじゃねえよ。
途中で死ぬほど焦らせやがって」
向かいのブースから出てきた小鳥遊は、苦笑いと泣き笑いが混じったような顔をすると、璃音の額を人差し指で突いた。
「ごめん。
瑠維と目が合っちゃって」
「立て直したんなら、それでいいんだ。
………それに…」
「ん………?」
「バタバタしてたからちゃんと言えないままだったしさ。
その…、何つーか…、さ。
アイツの事…」
「瑠維?」
「………ああ。
…一服盛られてたっつっても、言い訳なんか出来ねえよ。
あん時、瑠維を止められなくてゴメンな。
俺も、忍も、後悔ばっかりでよ…」
大柄なのにシュンとしてるのが可笑しくて、璃音はつい噴き出しそうになる。
「もう、謝らなくていいよ。
あの日の事は、終わったことだもの」
「璃音…」
「龍嗣はね、全部引っくるめて僕を受け入れてくれた。
馬鹿なことしたのに、命を懸けて助けに来てくれた。
怖がって踏み出せない僕を、ずっと待っててもくれた…。
ちゃんと立て直せたから………、だからね、謝るのはおしまい」
「……………っ」
璃音がフワリと笑った瞬間、小鳥遊がボロボロと涙を零した。
「玲…?」
「小鳥遊さん?」
「ちっ、違うぞ、泣いてんじゃねえぞっ。
鼻水が逆流しただけだかんなっ。
俺が泣く訳ねえだろうがよ」
「………そういう事にしといてあげる」
「…………っ、何だよその上から目線はよ」
クスクス璃音が笑い出すと、涙をゴシゴシ擦っていた小鳥遊が笑い出し…。
つられた龍嗣も笑い出していた。
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