436 / 454
・
瑠維と小鳥遊を後ろから弓削が追い立てる形で、三人はゲストルームに引き上げていった。
龍嗣と璃音もシャワーを浴び、部屋へ戻る。
あの雪の日、龍嗣の中にあった古い恋が完全に終わり、璃音で満たされた場所だ。
いまは、幼かった頃の璃音の香りが消え去り、別の香りがする…。
龍嗣だけを魅了する、甘く、蠱惑的な香りが…。
「……………」
「璃音?」
本棚に手をかけ俯く璃音を訝しみ、龍嗣が声をかけた。
「なんだか、ジェットコースターみたいな一日だったね…」
「そうだな……」
朝食もそこそこに、弓削が操縦するヘリに乗り込んで、手術に立ち会った。
思わぬアクシデントに見舞われ、胃が締め付けられそうにもなった。
「龍嗣」
「ん?」
「ありがとう…。
龍嗣が傍にいてくれたから、何とか乗り切れたよ」
「そんなに大したことはしてないだろ」
「そんなことないよ。
傍にいて、ギリギリの所で呼び戻してくれた。
龍嗣じゃなきゃ、出来ないことだったんだもの。
ありがとう…っ」
「……わ…っ」
ぼすっ。
振り返った璃音が、龍嗣の胸に飛び込んできて、そのままベッドに倒れ込んだ。
「こら。
ビックリするじゃないか」
「ごめん。
だけどね、こんなふうじゃないと、きっと龍嗣に言えないから」
「………?」
広い胸に顔を埋めたまま、言葉を紡ぐ。
耳の中が、逸る鼓動で煩いけれど、今言わなければ。
体がフワフワして、力が入らないけれど。
勇気を出して。
深く息を吸って。
声に、する。
「龍嗣っ」
「…はい?」
「大好き、龍嗣。
誰よりも、愛してる。
弱い気持ち克服したら…、頑張って龍嗣のこと、めろめろにするから…」
「………ん」
「…永遠に龍嗣のこと愛して行きたい。
いい…?」
「もちろん。
私も、璃音のことを永遠に愛していく。
絶対に離さないから、覚悟しておくんだよ?」
「……うんっ」
極上の笑みを浮かべた璃音が顔を上げ、龍嗣を覗き込む。
「絶対、めろめろにするね」
「期待してるよ」
返事の代わりに口づけが落とされ、甘い雰囲気になる。
何度も愛を囁き、唇を重ねて、身も心も蕩けそうな甘い甘い時間になったのは、本当に久しぶりのことだった…
ともだちにシェアしよう!