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 瑠維と小鳥遊を後ろから弓削が追い立てる形で、三人はゲストルームに引き上げていった。  龍嗣と璃音もシャワーを浴び、部屋へ戻る。  あの雪の日、龍嗣の中にあった古い恋が完全に終わり、璃音で満たされた場所だ。  いまは、幼かった頃の璃音の香りが消え去り、別の香りがする…。  龍嗣だけを魅了する、甘く、蠱惑的な香りが…。 「……………」 「璃音?」  本棚に手をかけ俯く璃音を訝しみ、龍嗣が声をかけた。 「なんだか、ジェットコースターみたいな一日だったね…」 「そうだな……」  朝食もそこそこに、弓削が操縦するヘリに乗り込んで、手術に立ち会った。  思わぬアクシデントに見舞われ、胃が締め付けられそうにもなった。 「龍嗣」 「ん?」 「ありがとう…。  龍嗣が傍にいてくれたから、何とか乗り切れたよ」 「そんなに大したことはしてないだろ」 「そんなことないよ。  傍にいて、ギリギリの所で呼び戻してくれた。  龍嗣じゃなきゃ、出来ないことだったんだもの。  ありがとう…っ」 「……わ…っ」  ぼすっ。  振り返った璃音が、龍嗣の胸に飛び込んできて、そのままベッドに倒れ込んだ。 「こら。  ビックリするじゃないか」 「ごめん。  だけどね、こんなふうじゃないと、きっと龍嗣に言えないから」 「………?」  広い胸に顔を埋めたまま、言葉を紡ぐ。  耳の中が、逸る鼓動で煩いけれど、今言わなければ。  体がフワフワして、力が入らないけれど。  勇気を出して。  深く息を吸って。  声に、する。 「龍嗣っ」 「…はい?」 「大好き、龍嗣。  誰よりも、愛してる。  弱い気持ち克服したら…、頑張って龍嗣のこと、めろめろにするから…」 「………ん」 「…永遠に龍嗣のこと愛して行きたい。  いい…?」 「もちろん。  私も、璃音のことを永遠に愛していく。  絶対に離さないから、覚悟しておくんだよ?」 「……うんっ」  極上の笑みを浮かべた璃音が顔を上げ、龍嗣を覗き込む。 「絶対、めろめろにするね」 「期待してるよ」  返事の代わりに口づけが落とされ、甘い雰囲気になる。  何度も愛を囁き、唇を重ねて、身も心も蕩けそうな甘い甘い時間になったのは、本当に久しぶりのことだった…

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