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第2話
朝食の献立と時間をメールする。
先着順で大体五人ぐらいまでを目安に僕は朝食を提供する。
素人料理なのだけれど食堂に行きたくない人や大勢で食べたい人などがやってきて一緒に食事をする。
材料費なども含めて彼らからお金をもらっているので苦ではない。
リクエストをもらったらすぐに食べることを条件に朝ごはんをお弁当として配達もしている。
実はこれは友人から提案されて始めたことだ。
最初の数回は材料費をもらわなかったけれど連続したり僕が作るのが当たり前な空気になってしまったので今後の生活を考えると難しいと放送部である友人に相談した。彼は僕の経済状況を知り今のスタイルを作り上げてくれた。
誰かと食べるのは楽しいし、五人程度なら料理を増やしても苦にならない。
さすがに人数が多すぎれば争いが起こったり僕の手に余ることになる。
だから五人前後というのは理想的だ。
時折夕飯などリクエストをもらったその人の為だけに作るので二人っきりで食べることになるけれど以前は榛名と一緒だったから受けないことが多かった。
友人からは仲がいい、信頼できる相手とだけ二人っきりになるように言われていたし、相手の部屋で食べる場合はメールで教えるように言われていた。友人は僕のマネージャーみたいになっていた。悪いと思っていたけれど夕飯の献立を自分の好きなものにしてくれるだけでいいと友人は笑う。
あと定員オーバーになっても友人の分は別に作る、そういう約束をしている。
榛名と距離が出来て、スモモくんから榛名の名前が出ない日はないそんな中でも僕はどうにかやっていけている。
それは僕と一緒に食事をする空間を楽しんでいてくれる彼らのおかげだろう。
いつからか予感があった。
スモモくんは毎日、榛名の話をする。
今日は榛名とどんな話をした。今日は榛名がこんなことをした。
スモモくんは楽しそうに語る。
榛名のおかげで親衛隊からの制裁もなく平和だという。
夕食を食べ終わって寝る前のお風呂の前後の短い同室者としての触れ合い。
その間にスモモくんが口にするのは榛名のことだけだ。
榛名がどれだけ格好いいのか、榛名がどんな風に自分を大切にしてくれるのか。
スモモくんはきっと僕が榛名と付き合っていることを知らずに口にする。
スモモくんに悪意はないだろう。
僕は榛名と付き合っているのかもわからなくなったせいで自分が榛名の恋人だと主張できない。
何も言わずに分かって欲しいなんておかしい自覚はある。
それにスモモくんは生徒会役員たちに自分はノーマルで男を好きになったりしないと口にした。僕と榛名が付き合っていることも信じないか否定的に見て気持ち悪がるかもしれない。男同士なんておかしいと人の多いところで大声で叫んだらしいスモモくん。それがまた親衛隊たちの反発を招いたとしてもスモモくんに悪気はないのだろう。事実を口にしているだけだ。それで人を傷つけたとしてもスモモくんはきっと永遠に気づかない。
悪意のない無邪気な彼は愛される存在なんだろう。
この学園に居ないタイプだ。魅力的なのはよく分かる。
でも、僕は毎日苦しかった。
スモモくんと一緒にいる時間は苦痛だった。
同室者として、同じ特待生としてスモモくんの話を聞いてあげないといけないけれど、彼の口から出る榛名の言動に胸が痛む。僕を否定するようなスモモくんの強さにもまた心は削られていった。
そして、どこかで感じていた予感の通りにスモモくんの口から決定的なものが出てきた。
夕食の片づけをしながらお風呂を作っている最中のこと。
勢いよく玄関からやってきたスモモくんは僕に満面の笑顔で言った。
――榛名重蔵と付き合うことになった、と。
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