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第5話

 保険医さんに付き添ってもらって僕は病院に行った。  検査の結果は「原因不明」だ。  はっきりと分かりませんとは言われなかった。  お医者さんとしてそういう言い方は出来ないのかもしれない。    耳に傷はついていないし、脳も問題ない。  だから心因性疾患ではないのかと指摘された。  心療内科はその病院にはなかったので必要なら紹介状を出すと提案されたけれど僕は断った。  とりあえずは様子を見てからとお願いしたのだ。  お医者さんも強く勧めてくることはしなかった。  今は検査で分からないだけで病気の兆候という可能性だってある。    少し心配だったお医者さんとの意思疎通は問題なかった。  筆談なので最初はお医者さんの癖字が読めなかったけれど看護師のお姉さんが代筆してくれてからはスムーズだった。    病院をたらい回しにされるのは保険医さんに悪いし、正直治らないなら治らないで仕方がないと思っていた。  治療費がもったいないので身体が健康であるのなら別にこのままでいい。    メンタルクリニックに通うのがイヤなのではなく僕は状況を改善させる気がなくなっていた。    とても心地よかったのだ。無音の空間が幸せだった。  晴れ晴れとした気分で身体が重かったのが嘘みたい。    学園に戻るといつも一緒に食事をする何人かが出迎えてくれた。  僕が何も聞こえないことを知っているのか何かを言おうとして口を閉じた。  

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