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榛名重蔵1

 おれはよく王子様と言われる。  自分ではそのつもりは全くなかったが歯の浮くようなセリフを口にすれば周りは喜んだ。  人によってはチャラチャラしていると言われることもあるけれど格好いいと好意的に受け取られる。  この学園が特殊なのか年齢的なものなのかは分からない。    帝王と呼ばれるような生徒会長、朝比奈あずみと比べれば自分は普通の人間だと思う。   「じゅーぞー」    まりもヘアーと称されるアフロよりも爆発度が低いモサモサとした髪の毛の桃李(とうり)。  あだ名なのか周りにはスモモと呼ばせている。  漢字をひっくり返して李桃(すもも)なのだろう。  李だけでスモモと読むけれど名前として李桃をスモモと読ませることはある。    桃李はまだ許容できるがスモモは男の名前として会長のあずみ並に違和感がある。  おれが重蔵だからかもしれない。  恋人である氷谷りうも不思議な名前だとは思うがこの学園では普通だ。   「じゅーぞー、じゅーぞー遅いぞっ」    手を振って自分はここに居るとアピールする桃李におれは苦笑する。  朝食や昼食を一緒に摂るのは食堂への行き来が一番危ないからだ。  この時間は食堂に人が集まっているせいで少し道をそれれば人気(ひとけ)がなくなってしまう。    最初は面倒だと思った。転入生だからといって護衛として自分がくっついていないといけないなんて馬鹿馬鹿しいと感じていた。  一緒に居れば転入生が生徒会役員を誑かしているなんていうのは根も葉もない噂だというのが分かる。  桃李はいい人間だった。  役員も生徒の間で人気のある者たちも桃李とは友人でしかなかった。  友人だからこそ話して遊んで一緒にいたがる。  それだけのことだったが影響力のあり過ぎる生徒たちばかりだったので特別扱いになっていた桃李に不満が募った。    一方的過ぎる言い分で勝手に断罪する生徒たち。  はっきり言って見るに耐えない。

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