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氷谷桃李4
心を傷つけるのはいつだって心ない言葉じゃない、心があるからこそ吐き出される悪意だと、そう言ったのは副会長だ。
手続きが間に合わず新入生ではなく転入という形で氷谷りうの通う学園に入った。
俺はいつでも周りに恵まれ助けられている。
明るさ、少しの狡さ、意図しない天然さとそれなりに愛くるしい部類に入る顔で得をする。
りうは綺麗だけれど不器用だった。
その不器用さは俺のせいだということも忘れてはいけないんだろう。
転入した高校であだ名で呼び合っていた夜遊び仲間がいたことは幸いだった。
案内としてやってきた副会長や会計、風紀の副委員長なんかは顔見知りだ。
男同士が当たり前の空間が嫌で副会長たちは中学のころ外に出て俺と出会った。
桃李とは名乗らずスモモと名乗っていたので学園に来てからもずっと周りからスモモと呼ばれることになった。
予想外だったのは照れ隠しと気まずさからカツラを被った俺をりうは弟とは扱わなかった。
年下の転入生。同じ特待生だから同室になったと解釈していた。
俺とりうが兄弟だから気を利かせられたに決まっているのにその態度。
分からないわけがない。気づかないふりをしているなら、なんでなのか。
答えは考えるまでもないのかもしれない。
俺は今までずっと、りうから奪っていた。
だから、りうが氷谷桃李という存在を消してしまっても仕方がないのかもしれない。
それだけのことを俺はした。
でも、りうの近くにいたいから無理矢理に学園にやってきた。
新しい環境ならやり直せると思った。
それが俺の勝手な願望でしかなかったとしても、りうに愛されて必要とされたい。
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