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エンド裏:朝比奈あずみの幸せのカタチ2

 やわらかくて温かだとか言われる風紀委員長。お人好しで目の前に傷ついた人がいたらそれを優先する男。  べつにいくらでも自分がしたい善行をすればいい。  ただ、今回の件で他人への優しさが誰かに優しくないと覚えておくべきだ。  見た目が怪我していなかったら傷がないわけじゃない。  笑っているからといっても涙を隠していないとは限らない。    氷谷りうが特別隠し事がうまくて面倒な人間だとは思わない。  俺はりうが傷ついてそれを抑え込んでいるのを感じていた。  痛みに逃げ出したがっているのも分かっていた。    痛みが人の形をしているとは思わなかった。  スモモがりうの痛みの根源だろう。  こいつの存在をりうは自分の人生から切り離したくて仕方がなかったんだ。  この学園にやってきた元々の原因もこいつだろう。    りうの事情のすべてを知っているわけじゃない。  先輩との会話ログを拾い読んで大体の把握は出来た。    スモモ、氷谷桃李はりうのいとこで弟のように生きていた。  りうの家に寄生した害虫。  家族の調和を乱す異物。  本人にその自覚がない、あるいは自覚しているにもかかわらず駆除されることを拒む最悪の虫けら。   「風紀委員長の護衛がなくなったから早速、血だるまにされていたのを回収した」 「……犯人は?」 「さあ」 「どうしてここに、風紀室に連れてきた」    保健室よりも遠い風紀室に連れてきた理由は一つだ。  風紀委員長がいるから。  持ってきたといっても触りたくもないので自分の親衛隊を呼びつけて引きずらせたので労力はない。   「保健室に放置してまた被害があったらかわいそうだろ」 「……保険医は?」 「運動部員で怪我をした生徒がいるらしくそちらに向かっている」 「そうか」    俺の「かわいそう」という発言に眉を寄せる。  そんな優しさがあるようには見えないと言いたいのかもしれない。   「これは餌だ」 「なんだって?」 「りうがどれだけ自分を好きでいるのをやめてと言っても風紀委員長は未練があるだろう? 自分があのときこうしていたらまだ一緒にいられたと夢を見てしまうだろう? だから、スモモをやるよ」    意味が分からないという顔の風紀委員長に肩をすくめる。   「血だらけで人から恨みを買ってかわいそうだろ? ちゃんと怪我しないように見ていてやれよ」 「なにを――」 「氷谷りうが風紀委員長にフラれる原因を作った転入生が学園から嫌われないとでも?」    すでに風紀委員長と図書室の麗人である氷谷りうの破局は知れ渡っている。  風紀委員長が氷谷りうと別れて転入生と付き合いだしたことによって氷谷りうが心ない人間に襲われたことも。  転入生さえいなければ別れるはずがなかった二人。  転入生に引き裂かれた二人。    風紀委員長を好きだけれどりうには勝てないと諦めた人間。  りうのことが好きだけれど風紀委員長には勝てないと諦めた人間。  二種類の人間は今回のことに腹を立てている。  氷谷りうを盲目的に愛する人間や生徒会長である俺を崇めているような人間にとっても転入生は敵だ。

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