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第1話-4
3駅分の電車が、たった12分のそれだけの時間が長く感じた。
遊矢がいないといつもそうだった。
世界が大きなジオラマみたいで。
俺もジオラマの一部にしてくれよ。
感情とか持ってないただの人形に。
そしたら、
そしたらこんなに、……苦しくなんないのに。
駅から家までの道を真っ直ぐ帰る気にはなれずに、少し遠回り。
日暮れの団地の公園に人影はなく。
ギィッ
肩にかけていた鞄を抱きしめてブランコに乗った。
泣きそうである。
あの茶髪の女の子も教室の扉で絡んでた女の子も今までの歴代彼女たちも、みんなみんなかわいい女の子だった。
俺とは何もかも違う。
俺はかわいくもなければ女の子でもない。
それに俺じゃあいつに、そんな、好きって伝えるようなスキンシップはとれない。
男で、幼なじみだから。
この気持ちは言えない。
今の関係を壊したくない。
でも、誰かがあいつの一番になるなんてそんなの耐えらんない。
はぁ…、と。
伸びる影にため息をこぼしてから空を眺めた。
「気持ちじゃあ、誰にも負けねぇのにな……」
ギィコギィコ、ブランコを漕いで。
その他もろもろ感傷に浸ってたらぶわっとフラッシュバック、遊矢からのバックハグ事件。
あの時の遊矢、温かかったなぁ。
見つめあっちゃったし。
ほっぺつんつんされたし。
冷えてた心がぽかぽか。
「…………勃った。」
ついでに俺の息子もぽかぽか、あつあつ。
主張を始めた。
不意すぎるため足掻くこともできずに。
そこからはもう大変。
まさか外でオナる訳にもいかないから走って帰宅。その頃にはもう辺り真っ暗。
玄関で靴脱ぎ捨てて、母さんがなんか言ってたけどはいはい分かった了解サマーナイト!って受け流しながら自室までダッシュしたんだ。
上がった息にも構わず、荷物は投げて扉をバタン。
閉じられたカーテンで部屋は闇のまま。
でも電気をつける余裕なんてもん、もうなかったから。
「は、………はぁ、」
ベルト取って。
チャック開けて。
ズボンを膝まで下ろしてパンツも下げれば。
俺の愚息が跳ねる。
ティッシュも用意できなかった。
そのまま、そこでシゴいた。
遊矢に侵されてる自分を、想像して。
「はぁ、は、あ……遊矢」
ごめん遊矢。
こんなんが幼なじみでごめん。
俺はいつも、お前で抜いてんだ。
想像する。遊矢の息遣いを、体の質感を、触り方を、見つめられるはずの瞳の熱さを。
希う。それらがあわよくば1度でも、確かな感情を伴って俺に向けられることを。
そうして一心に、愚息を扱く。
「…あ、はぁ、遊矢ぁ…は、」
遊矢に心のままアピールできる女の子たちが羨ましい。
なんでもないように振舞ってるけど、胸の辺りに黒い靄(もや)が渦巻いて。
俺だって遊矢に抱きつきたい。
俺だって遊矢に好きって伝えたい。愛してるって。他の誰よりもお前が大切だって。
それに俺だって遊矢に、
遊矢に……
動かす手を早めて達した。
手の平に飛び出した白濁の欲望。
心の内も吐き出したくて、天井を仰ぎ見る。
「……遊矢に、抱かれてぇな」
気持ちよかった。
でも、虚しくて寂しかった。
本当は今日、一緒に帰りたかったんだ。
少し放心してから我に返って。
後始末をしようと思い。
よろよろ立ち上がって、汚れないよう肘で扉脇の電気をつけた。
次はティッシュ。確かベッドの近くに……
視線のその先に、俺のベッド。
誰もいるはずのない俺のベッド。
なのに。
なぜだかそこには、まさに俺が想っている奴がいて。
全身の血の気がサアッと引いた。
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