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第1話-5
side遊矢
大成は先に帰ってしまった。
呼び止めたけど見向きもしてくれない。
いつからか大成は、俺が女といる時帰るようになった。
確かに彼女とは放課後予定があるし、高校生にもなって幼なじみとずっと一緒ってのもおかしな話だろう、きっと。
でも、………大成に背中を向けられると、胸が苦しくて痛くなる。
ゲーセン行こうって、言ってたのに。
残された俺は女の子と遊ぶ気にはなれず。
なんなら少し、触ってくることか、はたまた別の何かに対してかムカついて。
やんわり断ってから帰路に着いた。
真っ直ぐに家へ。
着く頃には、日が傾き始めていた。
だが隣の、大成の家のあいつの部屋に明かりは点ってなくて。
どうしたんだろ、と思う。
そしたら自然と足は向かって。
「お邪魔してまーす」
どうせ俺ん家誰もいないんだし、なんて誰にともつかない言い訳をしながら。
「遊矢くん、いらっしゃーい」
大成の母さん、紫(ゆかり)さんに迎えられ、通い慣れたあいつの部屋へ。
カーテンから差す西日が眩しい。
照らされているベッドは暖かそうだ。
大成の陽だまりみたいな匂いが好きで、あいつに黙って大成のベッドでよく昼寝をする。
なにしてんだよーって後から怒ってくるけど、起こす時はすげぇ優しくて。
『ゆーや、そろそろ夕飯だから起きろ』
覗き込んでくる大成に、心が満たされる。
それも期待しての、毎度の行動。
我ながら理由は分からないけれど。
ブレザーと鞄をベッドの脚に立てかけて、当たり前のように布団の中に潜り込み。
鼻まですっぽり入って幸せに包まれながら。
間もなく、眠りに落ちた。
ドタドタバタバタ。
バンッ。
ゴトッ。
バタンッ。
不意に大きな音がしてうっすらと目を開ける。
暗い。
どんだけ寝てたんだろ。
大成のやつ、今帰ったのかな。
こんな時間まで何してたんだ。
息上がってるし。ランニングか?
てか、……まだ眠い。
起き上がるのが億劫で再び寝入ろうとすると。
荒い息の中に熱っぽいものも混じってる気がして。
なんだ、どうしたよ大成。
カチャカチャ。
ああ、着替えんのかな。
だったら電気くらいつけりゃいいのに。
でもつけられたら寝づらいから、やっぱいいや。
「……………んッ」
水音と声が耳に届く。
「は、あ………、遊矢ぁ」
切なげに俺を呼ぶ幼なじみ。
「ん………は、…遊矢」
水音はどんどん激しくなって。
俺を呼ぶ声もさらに熱っぽく、そして色っぽく。なって。
「……遊矢に、抱かれてぇな」
少しして、部屋の電気がつけられた。
振り返った大成と目が合う。
大きく開いた瞳をぱちくり。
この表情、さっきも見た気がする。
ああ、……休んだ担任の代わりに来た人が早くHRを終わらせたから、珍しく大成を迎えに行こうと思って教室からあいつを呼んだ、あの時だ。
そんなことを思いながら起き上がった。
大成は一瞬で青ざめ。
ベッドから降りた俺はゆったりとした足取りで、何も言わずに大成のもとへと向かう。
あいつは一歩、また一歩と後ずさり。
履きかけのズボンが邪魔そうだ。
しかしすぐに壁に遮られ逃げ道を無くした。
こいつの部屋はそんなに広くないから。
俺は大成の正面に立って、呼びかける。
「なあ、大成」
ビクリとあからさまに肩を震わせ見上げてきた。
先程までの興奮覚めやらぬ、な上気した頬。
潤んだ双眸に浮かぶ困惑。
その表情に、心臓の裏側がゾクッとする。
「……なん、で、お前」
「大成が先帰っちまうから」
「あの、……女の子、は」
「門のとこでばいばーいって、ハハ」
会話をしながらもっと大成との距離を詰めて。
今だ外気に晒されているあいつの下半身まで迷うことなく手を伸ばした。
「んなッ!??!」
慌てふためく大成。
そこはまだしっとりと熱く濡れていて。
上下に優しく動かせば徐々に固さを取り戻し。
「ちょ、ばか!何やって…」
「何って」
知らなかったんだよ。
大成があんな声出すなんて。
大成があんな声で俺を呼ぶなんて。
大成があんな、
あんな………………
かわいい、なんて。
「なあ、イイことしよーぜ?」
俺の下半身も、痛いくらいにズボンの中で滾(たぎ)っていた。
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