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第1話ー6

side大成 未だに深い闇の中にある俺の部屋で。 響く水音は果たしてどちらのものか。 俺か? それとも………、 「んッ、……あ、やめっ」 「“やめて”? こんな濡らしといて、嫌なの?」 意地悪く微笑む幼なじみか? 「ふ、んんっ、…んだよ、これ……あっ」 「これ? はは、"兜合わせ"っての」 可笑しそうに笑う遊矢に、オウムみたいに言葉を返す。 ────なんだよ、なんだよこれ、カブトアワセ、ってなんだよ?! てかそもそもどーしてこーなったッ??! なんで遊矢の遊矢が臨戦態勢に入ってんだ?!? よく遊矢が俺のベッドで寝てるけど、女の子といると思ってたからまさかいるなんて…っ! バレたっ、なんかもう、色々バレたッ!! 控えめに言って死にたいッ!! 俺が脳内で必死に現状把握してからの現実逃避を敢行している間にも、否応なく口から零れる甘い声。 控えめではあるけれども、確かにそれは部屋にこだまする。 「ばーか。声でけぇ」 そう言って。 遊矢は俺の口を塞いだ。 キスという形で。 最初から迷わず舌も入ってきて口内を蹂躙する。 俺の舌を絡めとったそれは逃げる隙も与えまいと深くまで溶け合って。 角度を変えてもっと奥へ奥へと。 飲み込めなかったどちらのともつかない唾液が下唇を伝って顎や首元まで艶めかせる。 上顎を舌で撫でられると背筋がゾワゾワして、目の前はチカチカする。 息苦しい、のに。 すげぇ気持ちいい。 まるで全身に毒が回ったみたいに、身体中が疼いて仕方ない。 五感がどれも敏感になって。 遊矢の手も、声も、僅かな呼吸も。 全部が全部俺を誘惑してやまない。 慣れない“気持ちいい”が頭の中を溢れ出して、体が全然言うことをきいてくれないんだ。 「………てかお前、感度よすぎ」 「うる、せぇ………んんッ」 「ほーらね。かわいいかよ」 「あ、…ん、誰がッ」 羞恥心から、腕を口に押し当てて漏れる声を塞ぐ。 ────正直、もうイきそうだ。 「あ、ま、待て遊矢! 俺もうだめ、だめだから…っ」 「だめって、何が?」 心底楽しそうに、でも見たことない色っぽい笑顔で覗き込んでくる。 俺はこれ以上ないくらい、顔を完熟トマトレベルで真っ赤にした。 ……こいつ、分かってて聞いてるっ!! イきそう、なんて口に出すのは憚られる。 でも欲望は高まっていくばかり。 理性と欲求の瀬戸際で、俺は………、 「この、手ェ離して、早く、退け!!」 精一杯下から睨みつける。 お前のことは好きだ。 でも想いあっている訳でもないのに、シモの世話をされるのは男の沽券にも関わるし。 同情だか、好奇心だかは知らないが。 軽い気持ちでお前とこんなこと、……したくない。 越えちゃダメだ、この線だけは。 ────俺の歯止めが効かなくなる。 そしたら遊矢は、なぁんだ。とでも言いたげに目を細めて。 熱い視線で俺の目を射抜く。 笑った。 心底愉快だ、とでも言うような笑顔。 でもそれは俺の知らない、幼なじみでも男友達でもない、………雄の、笑顔で。 心臓がこれ以上ないくらい大きく拍動する。 このままじゃダメだ、という野生の本能と。 このまま好きなようにしてくれ、という浅ましい本心。 どうすればいい。俺は、どうすれば…… 不意に耳元に顔が迫る。 「好きなだけ、………出せよ」 頬を遊矢の柔らかい髪が撫でてきて。 温かな吐息が耳奥に届く。 その低い声は何よりも心の底まで染みて。 首の皮一枚で繋がっていた俺の理性が、 消え去った。 勢いを増す手コキの速度。 亀頭から溢れ出した汁が遊矢の掌にまとわりついてグチュグチュと大きな音を立てる。 もう崩れかけている俺は遊矢に必死に抱きついて。 子鹿のごとく震える脚でもたれ掛かり。 初めて人から与えられる快感に、ただただ悶えていた。 「んんんッ、ふ、んん……ッ」 階下にいる母親に聞こえないよう、遊矢の胸元に顔を埋める。 シトラスが鼻腔に充満した。 「なあ、大成。二人でイこ?」 甘い声音に囁かれ、ペロリと耳をひと舐めされれば。 「んん────ッ!!!!」 「……っ」 俺たちの愚息は暴れた後、達した。

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