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第2話 泣きたい時は
デイアフタートゥモロー。
なんだかよく分からないことが起きてから早三日。
…………アァ。
今日も、いい日ダナ!
なんってスバラシイ日なんだロウ!!
俺は言わずもがな、現実逃避を日夜繰り返しているのだった。
何故ならあれからというもの、遊矢は基本新しい彼女といたからだ。
俺と一緒に帰ることも、ましてや目を合わすこともなく。更には話しかけてくることも無い。
あの日、あの後。
俺が放心していると、階下から母親が夕飯を知らせた。
顔にかかった髪を退かした遊矢は、前触れなく俺の唇に口付けを落とす。
触れるだけの、短いキス。
目を開けていたから、間近に迫るのをスローモーションのように思えて眺めた。
離れた遊矢はベッドの傍らにあったティッシュを持ってきて、自分のを拭きながら俺にも箱を差し出してくる。
お互い後始末を終えたら、最後にもう一度だけ唇を合わせてきて遊矢は帰った。
今は、それから3日経った昼休みである。
「お前最近クマ酷いな。旦那と喧嘩した?」
「俺男だし。旦那は俺だろ」
そもそも相手は誰だ。
卵焼きを口に運びながらさも当たり前のように首を傾げてくる鳴海翔太郎。
「仲良しイケメン幼なじみと喧嘩したんだろ? アイツ、大の旦那なんだろ??」
勘が鋭いのはさておき、誰から聞いたんだそんな設定。
コイツは馬鹿なんだから変なこと教えないでやれよ。
俺はブロッコリーをいじりながら「遊矢は旦那じゃねぇ」と呟く。
「……なんだよお前ら。夫婦喧嘩は柴犬も食わねぇんだぞ?」
「夫婦じゃねーしなんで柴犬限定なんだよ」
「そーゆーのはことわざ作った奴に聞いてくれ」
「そもそも、んなことわざねーだろ」
お弁当の唐揚げを頬張りながら、翔太郎は「え、ねーの?!」と割と本気で驚いた。
まじで言ってたのかよ。
正しくは夫婦喧嘩は犬も食わないだと俺は親切に教える。
てか夫婦じゃねーよ(2回目)。
「なんてこった。…………パンナコッタ」
「あ?」
「なんでもない」
翔太郎は隣の席のバスケ部員だ。
180超えの身長と夜のような暗い髪が特徴的で、遊矢と同じくらい女子におモテになる。
だがちょっと………いや結構、ものすごく、他の奴なんて比にならないほど、馬鹿である。
馬鹿を具現化したような男だ。
こいつの頭の中には何が詰まってるんだろう。
やっぱ筋肉か?
それは脳筋に失礼か。空っぽなのかもしれない。
「なんでケンカしてんだよ?」
「別に喧嘩はしてない」
「じゃあなんで全然話さねぇんだ?」
「んーまぁ、いろいろ」
「いろいろ?」
「誤魔化してんだよ。少しは察しろ」
「おうごめん。で、何があったンだよ?」
……言葉のキャッチボールが成り立っていない。
違う球を何度も同じコースに投げつけられてる気分だ。
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