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第2話-2

「泣きたい時は俺の胸筋あげるからな」 ニカッと人当たりのいい笑顔で最後のご飯を食べ切り、元気に「ごちそーさんした!」と手を合わせた。 ちょうど教室に入ってきた同学年のバスケ部員たちが翔太郎のもとに来る。 「翔ちゃんバスケしよーぜ」 「3on3でどーよ」 みんなしてデカい。 俺は別にチビじゃねーけど、これ周りから見たら小学生と大学生だったりして。 ははは。笑えねー。 「じゃーな大!」 「おー。いってらー」 翔太郎が仲間と出て行ってから、おもむろに自分の胸元へ目をやった。 言わずもがな、俺の胸は平たく胸筋なんて皆無である。 対して翔太郎は程よくついてて体つきだけなら憧れだ。 多分あいつ、泣きたい時は胸を貸してやるみたいなこと言いたかったんだろうな。 胸筋は貸すものじゃねーし。 誰かが泣いただけで胸筋あげるとか、あいつの代償半端ねぇだろ。 はい、放課後です。 やっと授業が終わりました。 「アーイスアイス〜♪」 即席ソングを歌う翔太郎と帰ることになった。 今日は部活が休みらしい。 教室で荷物を片付けていると、翔太郎が言う。 「なぁ大、駅前にできたゲーセン行こーぜ」 「えっ」 「え?」 「あぁいや、なんでもない。行くか」 「? おう」 思わず反応してしまった。 不審がられなかっただろうか。 翔太郎の言うゲーセンは、あの日遊矢と行くつもりだった所だ。 あの女の子が来なかったら遊矢と行けてたのに…。 そこまで考えてブルブルと頭を振り、思い直す。 何考えてんだ俺。 ちょっと女々しいんじゃねーの? 2人で遊びに行くのを勝手に脳内で『デート』って呼んで浮かれていた過去の俺。 今となっては以前の関係に戻れるかどうかすら危ういときた。 最近なんてまともに話してすらないし。 ────それに、何よりアイツの考えがまるで分からない。 あの日の夜、俺は唇の感触とかを何度も何度も思い出しては布団の中で羞恥に震えていた。 奇妙なカタチであれずっと望んでいた幼なじみ以上の触れ合い。 遊矢で自分を慰めていた事に関して、罵倒されるどころか俺を求めてくれていた事は遊矢の遊矢を見れば明白だった。 ……もしかして、遊矢も俺を…? なんて抱く淡い期待は、次の日アイツが女の子と登校している光景を目の当たりにして崩れ去る。 そこでようやく気づいたんだ。 ただの気まぐれ、暇つぶしだったんだと。 それから放課後はアイツの教室に行っていないし、ましてやアイツから連絡が来ることもない。 ……………そりゃぁ、キモイよな。 幼なじみが自分に犯されること想像して抜いてるなんて。 「大?」 気づけば、翔太郎が心配そうに身を屈めて覗き込んでいた。 「でーじょーぶ」 安心させようと、勘づかれまいと、笑う。 作り笑顔にはもう慣れた。 あいつが何も言ってこないなら俺から言うことは無い。 このまま時間が流れれば俺の中の想いも少しは風化してくれるだろう。 幼なじみとしてまた楽しく遊びたいけど。 まだ遊矢の隣にいたいけど。 本当は絶対遊矢の隣を誰にも譲りたくないけど。 それは全部俺のわがままなんだって、知ってるんだ。

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