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第3話ー2

「ん、……ふぁ」 例えようもない高揚感と浮遊感に侵される。 脳みそがグダグダに蕩けてから、遊矢のキスは首元まで落ちてきてチクリとした痛みを伴ってから離れた。 腰が抜けてしゃがみこみそうになると遊矢の腕に支えられたから、もたれかかるような体勢になる。 顎をくいっと上げられれば色気を含んだ瞳で見つめられ、親指で優しく濡れた唇を拭われる。 それすらにも感じてしまい、んっ…と小さく声を漏らした。 ……やべぇ、ちょっと勃った。キスだけでこれって女かよ。 あーでも、まあ俺は童貞だからんな。 純粋な俺にディープなやつはまだハードルが高杉くんなんだわきっと。 誰にともつかない言い訳を心の中で並べながら遊矢を睨みつけた。 「お前、……なんだよ、急に」 「なんだってなに?」 「今までそのき、キスとか、してこなかっただろーが」 キスの所だけ心做しか小声になる。 てゆーかそもそも、ここ数日話してなかったのにどんな心境の変化だよ。 それに、俺の言う今までってのは幼なじみとして過ごしてきた腐れ縁期間を指している。 だからまあつまりは、3日前のアレについても尋ねてる訳で…。 「あー……。理由を答えろって言われたら、そーだな」 手持ち無沙汰を解消するように俺の髪の毛を指先で弄ぶ。 小さい頃からコイツは考え事をする時によく俺の髪をいじるんだ。 小二で野球始めて丸刈りにしたら確か、泣かれた。稀に見る大号泣だった。 あの頃は俺の方がデカくて、コイツは弱くて小さかったのによ。 いつの間にか身長は抜かれてかっこよく成長しやがって。 …………………好き、だなぁ。遊矢のこと。そーゆーのも全部ひっくるめて。 懐かしい思い出に耽ってると、遊矢の手が離れてもの寂しく感じる。 ──のも、束の間。 「お前がめっちゃくちゃ………かわいくみえるから」 「ンなッ?!」 一気に顔に熱が集まった。 慌てて遊矢から離れ、玄関のドアに背中が当たる。 え、な、なんだよ。 なんだよなんだよなんだよ、なんだそれ?! 「ほら、そーゆーの」 「どーゆーのだよ??!」 「大成って意外と肌白いだろ。だから恥ずかしかったり暑かったりするとすげぇ顔赤くなんの。それがエロくて襲いたいくらい興奮する、って最近気づいた」 青天の、霹靂。 それ以外なんも言えん。 これは喜ぶやつ、なのか…? わかんねぇ。 クソ、これだからマイペース道極めし腐れ縁美男子は。 平凡な俺にも分かるように二十字以内で超簡潔に伝えろや。 「ま、俺は今日もう満足ですので。どうぞお帰りくださいな」

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