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第11話※

「それに、シャワーとか……」    今日は外のロケで汗をかいたし、いくら着替えたとはいえシャワーまでは浴びていない。  こんな時は、いつも以上に丁寧に洗いたくなるのが当然だろう。  そんな心配までして、葵はふと一瞬我に返った。 (俺ってば、なに完全にミヤビを受け入れ態勢になっちゃってるわけ?)    そのことで急に恥ずかしさがよみがえってきて葵が俯いてしまうと、それを見た雅弥におでこにキスをされた。 「じゃあ、葵くんが先に使っていいよ、シャワー」    雅弥はそう促して葵を浴室まで案内してくれた。  扉を閉める瞬間、雅弥が「その間に色々と準備しておくから」と言った言葉が、ずっと葵の頭の中で回っていて、すぐにでも逃げ出したくなってくる。  だからといって、いつまでも浴室に立てこもるわけにもいかず、いつもより時間をかけて身体を洗った葵は悩んだ末に自分の服を着直して雅弥のもとへ戻った。 「あれ、服着ちゃったんだ?」    浴室から出た葵を見た雅弥にそう聞かれ、葵は無言で頷いた。  さすがにこの状況で、バスローブ一枚なんて無防備な姿を晒す勇気は葵にない。  そんな葵の心理を読んだのか、雅弥は笑いながら葵の耳元で囁く。 「脱がせる楽しみがあるからいいけど」  なんて言葉を残して、雅弥は浴室へと消えていった。 (いつの間にそんなセリフ言うようになったんだよ!)    一人残された葵は、今までに見たことがない雅弥の一面に翻弄されていた。  葵の中の雅弥は昔と変わらずに自分に懐いてくる可愛い後輩の存在だというのに、今ここにいる雅弥は葵の知らない一人の大人の男だった。 (あんなに可愛かったのに……)    なんだか自分を置いて雅弥だけが成長してしまったような感覚に、葵は悔しいような寂しいような複雑な想いでいっぱいになる。  しばらく色々と考え込んでいた葵だったがそんな気持ちを振り切るために、すでに温くなってしまったコーヒーを飲み干すと、ちょうど雅弥が浴室から戻ってきた。 「なんだよ?」    驚いたような表情でバスローブ姿の雅弥が見つめてくるので、緊張のせいもあってか葵は少しぶっきらぼうに声をかけた。 「……残っててくれたんだ」 「は?」    雅弥の呟きが聞こえなかった葵が聞き返すと、その問いには答えず、雅弥は嬉しそうに葵へと近づいてきた。 「移動しようか」    そう言って笑う雅弥の顔に葵は戸惑ってしまう。 (その顔は、いつもと同じなのに……)    そんなことを思いながら、葵は雅弥に手を引かれて寝室へと連れて行かれる。  ベッドにたどり着くなり身体を押され横に倒された。  条件反射で身体を起こそうと思った目の前で、雅弥がバスローブの前をはだけさせたのを見て動きが止まってしまった。  前回の役作りの時に本格的に作り上げた肉体は見事で、悔しいけれど年下の雅弥に色気すら感じる。 「場所も移したし、もう大丈夫だよね」    そう言って、雅弥が葵に覆い被さるようにキスをしてきた。 「あっ、ふぁ、ん……」    いい加減、慣れてきてしまったのだろう。  雅弥の首へと腕を回し、その動きに合わせて葵も自分から積極的に舌を絡めていった。 (だって、ミヤビに完全に主導権を渡すなんて悔しいじゃないか。俺の方が年上なんだから)    そんな地味なプライドを嘲笑うかのように、雅弥の手が服の裾から滑り込んできて葵の胸を撫でる。 「んぅ……」    小さく息をのんだ葵の反応を見逃さなかった雅弥は、葵の耳元へと唇を寄せた。 「さっきも思ったけど……葵くん、胸弱いの?」 「し、知るか! そんなこと」    咄嗟に葵はそう言い返していた。  実際、自分でそんな自覚はなかったし、今までそこを触られてもこんな感覚になったことはない。 「そう? しっかり反応してるけど」    言いながら雅弥が器用に片手で葵の上を脱がせ、露わになった胸の突起を指で摘まむと、そこが硬くなるのが葵自身にもわかった。  それどころか、そこを弄られ続けると別の所までも反応してくる。 「やめ……」    これ以上はまずいと思った葵は、無意識のうちに雅弥の身体を押しのけ、身体を捩って逃げようとした。  すると、そんな葵の動きを封じるかのように雅弥の手が移動していき、いつの間に外したのか全開になっていた下へと滑り込んでくる。 「んあっ!」    いやらしい手つきで自身を撫でられると、下着の上からでも十分に感じてしまう。 「あっ、お前……ずるい、んぅ……そこ」    声が上擦りそうなのを抑えてそう言う間にも、雅弥の手は止まることなく動き続ける。  それどころか白々しく「なんのこと?」なんて聞いてきた。 「んぁ……あっ、ぁ……」    素直に答えてやるのも悔しくて、葵は雅弥の問いには答えずに必死にその刺激に耐える。 「や、やだ……んっ、汚れ……る」    すると、いつの間にか葵の目元は潤んでいたらしく、雅弥がそこに静かに唇を寄せると言った。 「後でちゃんと洗濯してあげるから」    そんな言葉とともに、今度は下着のウエスト部分から雅弥の指が入り込んできて、葵自身が直に握られてしまった。  下着の中で少し不自由に動く雅弥の手に余計煽られていく。 「あ、やだ、あっ」 「いいよ……出して」    僅かな抵抗として雅弥の手を抑えようと掴む葵の手も気にせず、雅弥は最後に向けて葵を追い上げていく動きに変える。 「あ、んあっ、あ、だめ……ん、んっ!」    結局、我慢できなかった葵は下着と雅弥の手を自分が出した白濁のもので汚してしまった。 「はぁ……はぁ……」 (……最悪。これで年下の後輩に下着洗われるの決定じゃんか)    荒く呼吸を繰り返しながら、葵がぼんやりとそんなことを考えているうちに、残っていた下着やらも雅弥に剥ぎ取られ、完全に全裸にされた。 「汚れたままじゃ、気持ち悪いでしょ? それに……この方がやりやすいし」    そう言って雅弥の手で大きく両足を開かされ、さすがに葵の思考回路も復活してくる。 「ちょっ……ばか、やだ……あっ」 「何で?」    雅弥の視線から逃げようと身体を捩る葵を、いとも簡単に押さえつけながら雅弥が聞いてくる。 (何でじゃない! こんな格好させられて、恥ずかしくないわけがないだろう!)    しかも、雅弥はバスローブを着たままなのに自分だけ裸なんて。 「ひっ!」    いきなり後ろに冷たい何かを垂らされ、葵の身体がビクッと跳ねた。 「ごめん、冷たかった? でも、ちゃんと慣らさないと辛いのは葵くんだよ」    雅弥が垂らしたのはローションか何かだったのだろう。  指でそこを撫でられているうちに、最初は冷たく感じたそれも、だんだんと気にしている余裕がなくなってきた。 「ここ……葵くん、初めてでしょ?」    ローションの滑りを借りて、雅弥の指が入り口の浅いところをゆっくりと行き来する。 「あっ、やぁ……んぅ……」 (初めてかなんて、聞くまでもないだろ!)    さすがに声に出して反論することは出来ず、葵は今まで経験したことのない変な感覚に必死に耐える。 「大丈夫、すぐ良くなるから」    雅弥がそんな根拠のない慰めの言葉を口にすると、いきなり空いている方の手でさっきイッたばかりの葵自身を包み込んだ。 「あっ、んあっ!」    その手にもローションが垂らしてあったのか、さっきよりも快感の波が大きい。  直接的な刺激に、葵の意識がそこへと集中した隙を狙って後ろの雅弥の指が奥まで入ってきた。  前を弄る手はそのままで後ろを解すように弄られると、だんだんとそこが気持ち悪いのか良いのかさえもわからなくなってくる。  ただ説明の出来ない感覚と身体の中の熱さが増してくることだけは確かだ。 「葵くん……指、何本入ってるかわかる?」    その問いに、入れられている指が一本ではないことを理解して、葵はこみ上げる恥ずかしさに耐えながら首を左右に振った。 「だいぶ、解れてきたよ……ここも、勃ってる」 「んあっ! あ、ん、んぅ」    下と同時に胸の突起に吸いつかれると、今まで以上に身体が跳ねて声が抑えられなくなってくる。  終わりの見えない快感に頭の中が真っ白になって、ぼーっとしてきたころ、急にそれらの感覚がなくなった。

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