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第23話※
「あ、んぅっ、ああ!」
「葵くん……葵……」
「んあっ、雅……あ、雅弥っ!」
顔が見えない不安からか、葵が何度も雅弥の名前を呼んでいると葵の背中に雅弥が覆い被さるようにして葵の耳に噛み付いてきた。
そうなると、さらに身体が密着してより深く雅弥自身が入ってくる。
「んっ、も、もう……無理、ああっ!」
「イきたいの?」
「あっ、ん、んんっ!」
耳を甘噛みされたうえに色っぽい声で囁かれ、さらには自身を刺激されながら中を突かれて、葵はもう雅弥からの問いに答えることも出来ずにシーツに顔を埋めて自身を解放してしまった。
「葵くん……イッちゃった?」
葵の中から自身を抜いた雅弥が葵の身体を仰向けへと転がすと、顔を覗き込みながら聞いてきた。
あまりの解放感に、葵はだるい身体を動かせず、荒い呼吸を繰り返しながら小さく頷く。
それなのに……。
「あ、あぁっ……!」
いきなり、今度は向かい合った状態で、また雅弥自身が一気に奥まで入ってきて葵の身体が大きく跳ねた。
「俺、まだイッてないからね。続行しまーす」
年下の顔で可愛らしくそんなことを言ってくる雅弥を心の中でずるいと思いながらも、葵の口からは甘い声だけが零れてくる。
「んっ、ちょっと……いつもより……」
(激しすぎないか?)
そう、質問しようとした葵の口は雅弥のキスで塞がれてしまった。
(もう、頭の中がぼーっとしてくる……)
「この姿になると……欲望が、我慢出来なくなるんだ」
唇を離して呼吸を乱しながら、そう説明してくる雅弥の言葉をぼんやりと葵が聞いていると身体を強く抱き締められた。
「葵が可愛いから……抑えられない!」
「んあっ、ああぁっ!」
言った途端に中の雅弥自身の質量が増え、そのまま激しく腰を使われて葵は散々、喘がされて意識を手放してしまった。
◆ ◆ ◆
次に葵が目を覚ますと、目の前では雅弥が不安そうな表情で葵を見つめていた。
「ん……雅弥?」
「葵くん! 大丈夫?」
こっちが驚くほどの勢いでそう聞かれ、葵は鈍い意識の中、自分の状況を理解しようとする。
(あ……そっか、雅弥が激しすぎて、俺……)
あまりに恥ずかし過ぎる失態に葵が動揺していると、ふと雅弥の様子がおかしいことに気づいた。
「どうした?」
「ごめんね、葵くん。病み上がりだってわかってたのに、俺、自分のことばっかり考えて無茶なことして……」
そう言って涙目で謝る雅弥の耳と尻尾はペタッと下がり、狼というよりも飼い主に叱られた犬のようだ。
「せっかく素直になれたんだし、今日だけは特別な。毎回はさすがに勘弁だけど……」
それに、こんなに子供っぽくて可愛らしい雅弥の姿は何年ぶりだろう。雅弥が自分を慕ってなついていた頃を思い出す。
懐かしさを感じながら雅弥の耳を撫でると、嬉しそうに尻尾を振り雅弥が抱きついてきた。
「んぅっ!」
そのままベッドに押し付けられ、ちょっと苦しいが葵は少し雅弥の好きにさせてやることにした。
そして、しばらくベッドの上で二人のんびりとしていると、葵は急に思い出したことがあった。
「なあ、ずっと気になってたんだけど……」
「ん~、なに?」
雅弥の尻尾がパタパタと揺れるのをくすぐったく感じながら葵が声をかけると、葵に耳を撫でられるのが嬉しいのか、雅弥が気持ち良さそうな声で返事をした。
「結局、お前は俺のことをずっと好きだったんだよな?」
「もちろん! 人間界でテレビに映った葵くんを見て、俺も芸能界を目指したんだから!」
確かに人間界に身を隠していた雅弥がわざわざ人目につくような芸能界に入るなんておかしな話だ。
でも、それだと……。
「じゃあ、先月、撮影スタジオ近くで一緒にいた女の子は何だよ? あれ、やっぱりお前だろ」
聞くタイミングを逃していたのと事実を知る怖さから逃げていたために、そのことがずっとうやむやになっていた。
でも、正式に恋人同士になったからには、そこははっきりさせておかなきゃいけない。
「あ~……それは……」
「正直に話さないと、このまま帰るぞ」
言いたくなさそうな雅弥に葵が強気な態度でベッドから抜け出そうとすると、雅弥は慌てて葵を抱き締め引き留める。
「待って! ちゃんと説明するから、行かないで!」
その態度に葵がひとまず大人しくベッドに戻ると、雅弥が心配そうに顔を覗き込んできた。
「……話すから怒らないでね」
「内容による」
葵の素っ気ない一言に雅弥は覚悟を決めたのか、渋々、口を開く。
「……さっきも言ったけど、この姿になると欲望が強くなって抑えられなくなるんだ。それで、俺達狼男は満月の夜が一番のピークで……この力が暴走して他の人を襲わないように発散しないといけなくて。そのために毎回、魔界から……」
そう説明しながら、だんだんと雅弥の耳がまたもや垂れてくる。
「要は人間界でいう風俗か」
「俺が頼んだわけじゃないよ! 一族の奴らが勝手に……」
葵のことが好きだと言いながら、性欲は他で発散していたわけだから、確かにあまり褒められた行為ではない。
そんな自覚が雅弥にもあるのか、申し訳なさそうに小さな声で言い訳をする。
「だって、そうでもしないと俺、葵くんのこと襲っちゃいそうで。いきなり、そんなことしたら、葵くん絶対俺のこと嫌いになるだろうし……葵くんのそばにいるために仕方なく」
全てを知られて葵に嫌われるかもしれないと不安そうにそう話す雅弥の姿に、葵は怒りよりも愛しさを感じてしまった。
雅弥の頭をくしゃっと撫で付けると、葵は大きく溜め息を吐いた。
「……今度からは、そんな女寄こすなって強く一族の奴らに言っておけよ。仕事以外でお前を他の奴に触らせてたまるか」
突然の束縛宣言に驚いて涙目の雅弥が葵を見つめると、葵は照れくさいのか恥ずかしそうに雅弥から顔を反らした。
「……葵くん!」
「うわっ!」
苦しいくらいに雅弥に抱きつかれて葵が驚いた声をあげたが、それすら長年の片想いが実った雅弥には聞こえていないようだ。
「好きだよ、葵くん! 愛してる」
ものすごい勢いで尻尾をパタパタとさせて濃厚なキスをしてくる雅弥に、葵は『発情しやすい淫魔が恋人なのと、性欲が強い狼男が恋人なのとでは……どっちの方が大変なんだろう』なんて馬鹿なことを考えながら、抵抗する力を抜いたのだった。
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