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第7話

 大会前日になったというのに、俺はあの日から心ここにあらずといった調子だ。  二日前、雪染先輩が見せた表情を思い出す。  唇を尖らせながら、頬を赤く染めていたのは……何だったのだろう。 (セクハラっぽい発言に、ビックリした?)  俺の言葉からは、完全に下心が透けていただろう。下心を込めて言ったんだから、当然だけど。  ニコニコして、可愛くて、毎日俺だけを応援してくれて、可愛くて……エロい目で見たって仕方ないだろ! 俺は! 健全な男子高校生なんだ!  頭の片隅で、どうにか否定しようという気持ちがあったけれど……もう、無理そうだった。  ――俺は、ユキちゃんじゃなくて雪染先輩を……そういう目で、見ている。  二日間、雪染先輩について考えた。その度に『スカートの下には、俺と同じブツが付いているんだぞ』と、何度も自分に言い聞かせたんだ。  すると……言い聞かせている俺に対して、別の俺がこう言ってくる。  ――『だからどうした』と。 (最重要課題だろッ!)  そんな気持ちを込めて、ボールを蹴り飛ばす。見事シュートが決まるも、素直に喜べない。  俺はホモじゃない! 普通に女の子が好きなんだ! なのに、なのに……! (『雪染先輩のチンコを見てみたい』だなんて、どうかしてるッ!)  思わず頭を抱えると、サッカー部のメンバーが心配そうに俺を見ている気がした。慌てて頭から手を離し、自分のポジションに戻る。  明日の大会で勝てば、雪染先輩からご褒美が貰えるらしい。具体的にどんなものかは、未だに謎。  けれど……俺は一つだけ、心に決めている。 (考えるのは、もう疲れた)  元から、頭を使うのが得意じゃない。体を動かして、結果を得る方が性に合う。  ――つまり、当たって砕けろ精神だ。 (大会に勝ったら、告白する……!)  男だと分かっていても、意識してしまっていると。ユキちゃんを知った時よりも、今の方がずっとずっと……雪染先輩で頭がいっぱいだということを。  サッカーしか無かった筈の頭には、青黒い影がチラついて仕方なかった。

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