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第9話
戻れるなら、数時間前に戻りたい。結果が変わらないなら、せめて……雪染先輩と出会う前に。
今日は、大会当日。勝てたら雪染先輩に告白しようと決意していた、大事な日。そんな日だというのに……俺は、サッカー部の部室で一人、膝を抱えている。
(クソ……ッ!)
もう、分かるだろう。
――一言で言うと『負けた』のだ。
メチャクチャ走った。ボールに何回も触れたし、パス回しも絶好調。練習の時よりも、確実に動けていた筈だ。
――たった一度のシュートチャンスを、無駄にさえしなければ。
キャプテンから回されたボールは、完璧だった。落ち着いて、真っ直ぐに蹴りさえすれば……勝てただろう。
だけど俺は、点を焦った。勝ちたい気持ちと、雪染先輩に想いをぶつけたい衝動に……結果、敵のゴールキーパーにパスでもするかのような、ヘボいシュート。
大会の会場から、部員全員でバスに乗って高校へ戻り、そこで解散。
俺はどうしていいのか分からなくて……部室で一人、蹲っている。……何て、情けない姿だろう。
(雪染先輩……っ)
試合を、見に来た筈だ。きっとガッカリしただろう。居残り練習を毎日応援してくれたのに、あんなミスをするなんて……合わせる顔がない。
――それでも、会いたかった。
自分がこんなに女々しかったなんて、ガッカリだ。いっそ、キモい。
言葉にできない気持ちをグルグルさせていると、部室の扉が開いた。
(誰?)
部員かと思い、顔を上げる。
そこに立っていた人を見て……俺は幻覚でも見ているのかと、錯覚した。
「雪染、先輩……?」
男が着るような私服に身を包んだ、雪染先輩だ。
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