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第11話
雪染先輩はいつも、俺のを応援してくれた。だから、この言葉に深い意味は無い。
なのに……妙に落ち着かないのは何でだ?
「オレの話、してもいい?」
すぐに、頷く。それを見た雪染先輩は、俺から視線を逸らし、俯きながらポツポツと語り始めた。
「オレ、努力とかあんま好きじゃないんだ。演劇部に入ったのも、ダチが入るって言ってたからで……ぶっちゃけ、演劇とか興味無かったし」
確かに、雪染先輩に【努力】というイメージは無い。そういうのは面倒くさいと言いそうだ。
「まぁ、やってみたら楽しかったよ。脇役として出られたら、満足だったし」
不意に、雪染先輩が顔を上げた。
「今年の四月。部活終わりにグラウンドを見たらさ……一人で居残り練習頑張ってる奴がいたんだよ」
目が合ったかと思うと、すぐに逸らされる。一瞬だったのに、何故か……心臓が、騒がしい。
「練習したって誰にも褒められないのに、バカみたいに毎日頑張ってるなぁ~って思ってたら……それを見るのが、放課後の楽しみになってた」
雪染先輩の声が、どんどん小さくなっていく。それが、何故だかくすぐったい。
――ドキドキしすぎて、心臓が痛いくらいだ。
「次の劇で、主役に選ばれたのは……どっかのサッカーバカに触発されて、練習頑張ったからだったりする」
いつの間にか……雪染先輩は、耳まで赤くなっていた。
「だから、オレはソイツを責めない。これからも、ソイツが好きなユキちゃんとして、コスプレでもしながら応援したいなぁって……思ってる」
凄く、遠回しな言い方を選んでいる。
――だけど、分かってしまった。
「俺のこと、好き……なんですか?」
我ながら、デリカシーの無い訊き方だと……気付いた時にはもう遅い。
真っ直ぐに雪染先輩を見つめていると、すぐに気付く。
「ッ!」
――雪染先輩が、分かり易いくらい動揺したことに。
そんな姿を見せられて……我慢なんてできなかった。
「俺は、雪染先輩が好きです」
勝ってもいないのに、伝えたい言葉を口にしてしまう。
同時に……ご褒美を、奪い取ってしまった。
しゃがみ込んだ雪染先輩を、力任せに押し倒す。
「な――んん……っ」
――雪染先輩の唇は、凄く……柔らかかった。
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