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見せてよ
あの後すぐに電車に乗ったのに、自宅に着いたのは夜9時ごろ。
けんいぬは普段ご飯食べたらすぐ寝るタイプだから、もしかしたらもう寝ているかもしれないなぁ
なんて考えながらも、ドキドキしながら玄関のドアを開ける。
「遅かったな……福くんとのデートそんなに楽しかった?」
リビングのドアに寄りかかり、腕を組んでボクを冷たく見るけんいぬの姿は想像もしなかった。
「デートなんて、そんなんじゃないし」
「福くんαだからちょっと警戒してたけど、本当に俺のもんに手を出すなんてな」
カニの親切心を踏みにじる言い方にムッとして、なんでこんなやつのことを想ったんだろうってちょっと考えたボク。
「で、なに買ってきたの? 見せてよ」
ボクは白い紙袋をギュッと抱きしめ、けんいぬを睨む。
「今日は着るつもりない」
「ああ、着るもんなんだ……じゃあ着て見せてよ」
不敵に笑うけんいぬに今日は負けたくなかった。
「自力で発情しない、フェロモンが出ない……出来損ないのΩの君が誘うには道具を使うしかないんだからさ」
切れ長の瞳を細め、顎を上げて笑うけんいぬにボクは腹が立ってきた。
「見てろよ、クソα……出来損ないの意地を見せてやるから」
足音を大きく立てて寝室へと歩いていくボク。
「ほぉ、楽しみにしてるよ」
ふっと鼻を鳴らすけんいぬにボクは歯をくいしばって寝室へと入っていった。
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