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タァリのポッキーの日
「イリヤさん、お菓子もらったんで食べませんか?」
「おお、何だその箱?見たことないな」
「キキさんがニホンのお土産だってくれたんです!」
閉店作業は完璧だ。売り上げもそこそこだし、仕込みも早めに終わらすことができた。
今ちょうど二人は、戸締まりをし二階の住居スペースに戻ってきたところだ。
「夕飯の準備してくるから待ってろ」
そう言ってイリヤは早々とキッチンに消えていった。少しくらいゆっくりお菓子を食べたって問題ないのにな、とタァリは思う。
「おいしそー!」
お客さんから貰った箱にはきれいに包装されたお菓子が何本か入っていた。ポッキーと呼ばれる棒状のそれはチョコレートでコーティングされていて、てっぺんの数センチだけ何もついていない。
そう、「てっぺん」。この時タァリは通常持ち手となるチョコレートのついていない部分が上に来るのだと勘違いしていたのだ。
「最後にチョコがないと寂しいから、チョコがない部分から食べるのかな」
そういうことだとタァリは決めた。
パリポリポリポリ、とリビングに響く。
オーブンにローストを入れタイマーをセットしたイリヤは部屋に戻ってきた。
「あ、イリヤさーん、1袋残しておきましたぁ!」
「うわっ、触んなよ、チョコまみれじゃねーか!」
「だって、チョコが溶けちゃうんだもん!」
ペロペロとタァリの赤い舌が、指についたチョコレートを舐めあげる。
イリヤはゴクリとつばを飲んだ。疲れてるからか、タァリが美味しそうに見えるからか、抑えの効かない感情が下半身を巡る。
「わっ、びっくりした!」
手首を取られ、ソファーに背中を押し付けられたタァリは口に咥えていたポッキーを落とした。
イリヤの舌がタァリの掌を這い、指の股を擽り、人差し指が唇へと吸い込まれていく。
ソファーに落ちたポッキーを1本拾うとイリヤは端を咥えて、その反対をだらしなく開いたタァリの唇に押し込んだ。
「んんっ」
「安いチョコの味がするな」
「やぁんっ、ぁんっ待って、それ擽ったい」
熱い舌で首筋を舐められると背中がビクビクと震えた。擽ったいだけだったはずなのに、しつこく舐められると期待に体が熱くなる。
「い、イリヤさぁんっ」
「ん?なんて顔してんだお前」
腰が抜け動けなくなったタァリの体をイリヤはすくい上げ寝室へと向かう。
二人が部屋から出てきたのは何時間も先の話だ。
夕飯になるはずだったローストが真っ黒に焦げてしまい、出前を頼むことになったのはまた別の話。
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