わっしょいわっしょいそれそれそれそれっ、と楽しそうな声すら聞こえてきそうなほど明るい笑顔を浮かべる両親と家のものたちにより、番は盛大に出迎えられた。 　抱っこしていた番を皆に見えるように抱え直す。 「名は麻生。俺が名付けた」 「なんと！」 「山茶花が！」 「良い名でございます、山茶花さま！」 「素敵です！」 「素晴らしいです！」 「ネーミングセンスが光っておいでです！」 「あうーっ」 　知らないものたちに囲まれているというのに、騒がしい家のものたちにのっかるように番も楽しそうな声を上げた。なかなか肝の据わった造血鬼だ。 「子育てのことは俺にはわからないことだらけだから……、母さんに手伝って貰えるとありがたい」 「ええ、ええ。手伝いますとも！　母に任せなさいな、山茶花！」 　諸手をひろげ、番諸共抱きしめられる。 「この子のお部屋も用意してありますからね、さあさあ、行きましょうっ」 　荷物は率先して家のものたちが奪い合うように持ってくれたため、山茶花は番だけを抱えた状態で廊下を歩く。 　数日かけて磨きあげられた家の中は、見違えるほどに綺麗になった。 　無菌すぎるのもよくはないが、清潔なことに損はない。 （免疫のことを考えれば、外でやんちゃに走り回るぐらいがいいと、彩入さんも仰っていたな……） 　幼児ほど育てばこの番は外に放り出されて泥だらけになることだろう。 　造血鬼は殆どの機能がヒトと同じな故、風邪もひくし下手をすれば、滅多にはないが病気や癌にもなる。それで死ぬ造血鬼も、何百年かに一回、いると聞く。 （彩入さんのご子息だ……そんなことで、死んで欲しくない） 　番ができるまで随分とお世話になった、彩入が腹を痛めて産んだ番だ。 　大事に大事に、真綿にくるむように育てよう。 　――そんなことを考えていたのは初めの数年だけだった。